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下図「御紋付雀山咲図壺(ごもんつきすずめやまぶきずつぼ)台座付」

並河靖之七宝展(パラミタミュージアム)

並河靖之七宝記念館蔵
並河靖之七宝記念館蔵

 黒の背景地に咲き誇る黄色いヤマブキ。飛び交うスズメからは、さえずりが聞こえてきそうだ。頸部(けいぶ)の菊紋は、皇室関係からの注文品という証しだろう。

 七宝制作は、ほぼ原寸大で描かれた下図を頼りに行われる。並河の工場には、工場長でもあった中原哲泉(てっせん)をはじめ、並河の構想を描き出す腕利きの画工がそろっていた。下図には時に、部位の色みについての細かい指示などが書き込まれた。

 明治中期、並河のデザインは、古風な文様を装飾的にあしらった構図から、余白を生かした絵画的な構図に変化する。「文様から絵の域に」至ったと、国内外の博覧会で高い評価を受けた。「幼少期からの宮仕えで文化的教養を積み、美しいものを作る力が培われたのでは」と学芸員の湯浅英雄さん。

(2017年12月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)