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「五子奪魁」

春を迎える 年画に込められた願いと意図(名古屋大学博物館)

「五子奪魁」

 印刷技術が普及した明代(1368~1644年)、中国各地に年画の生産地が形成されていった。

 本作は、その産地のひとつ河南省の朱仙鎮で1980年代に刷られたもの。色彩が単純で濃厚、線も粗野で力強く、素朴な味わいがある。

 絵は、科挙に合格した五人の兄弟がさらに第一合格者の兜(かぶと)を奪い合ったという伝説に基づく「五子奪魁」。子どもが偉くなるように、という願いを込めた、おなじみの図柄だ。会場では、天津の楊柳青や蘇州の桃花塢で刷られた「五子奪魁」と本作を並べて展示。同館学芸員の野崎ますみさんは「丹念な彩色の楊柳青や、精緻(せいち)な線描で、日本の錦絵にも影響を与えた桃花塢など、地域によって異なる特色を見てほしい」と話す。

(2018年4月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)