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玉置太一さん(アートディレクター)
「ジュラシック・パーク」(1993年)

よみがえった恐竜が大暴れ

玉置太一さん(アートディレクター) 「ジュラシック・パーク」(1993年)

 初めて見たのは、僕がまだ小学生の頃でした。CG技術で再現された恐竜がリアルで、迫力があって、とても怖かった。家のテレビの前で、手で顔を覆って指の隙間からのぞくようにして見た記憶があります。

 遺伝子工学でよみがえった恐竜が放し飼いにされた施設「ジュラシック・パーク」。制御不備によってパークがパニックに陥り、視察に訪れた博士たちが危機にさらされます。このストーリーは、至ってシンプルで、分かりやすいものです。しかし、細部まで凝った演出がされていて、全然退屈に思いません。例えば、ティラノサウルスが登場するシーン。ドンッという足音に合わせて、コップにつがれた水が揺れて、不安や恐怖感がより一層引き立てられる。大人になって改めて見直してみても、素晴らしい演出だと感心します。博士たちが広大な草原で初めて恐竜を目にするシーンや、木の上に登ってブラキオサウルスと触れ合うシーンは、計算された構図が見事。やっぱり何度見ても飽きない映画です。

 シンプルだけど人の心を打つものを作るのは、とても難しい。僕が日々携わっている広告というものは、駅やスーパーなど様々な人が関わる場所に置かれて、コミュニケーションのきっかけになるものです。皆が分かりやすいものであるべきだけど、チープではだめ。そこにいつも悩まされます。この映画は、制作者の圧倒的な実力を感じさせますね。

聞き手・笹木菜々子

 

  監督=スティーブン・スピルバーグ
  製作=米
  出演=サム・ニール、ローラ・ダーンほか
たまき・たいち 
 1984年生まれ。電通に勤務。企業広告や商品パッケージ、CDジャケット、CMなど数多く手がける。昨年JAGDA新人賞を受賞。
(2018年1月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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