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日本近代洋画【下】 東京都現代美術館

写実を追究した作品を展観

清宮彬「静物」1922(大正11)年
清宮彬「静物」1922(大正11)年
清宮彬「静物」1922(大正11)年 河野通勢「柏の葉」1917(大正6)年

 東京都現代美術館は、1995年の開館に合わせ、東京都美術館の所蔵品を移管されました。26年に日本最初の公立美術館として開館した東京府美術館(現・都美術館)の近現代美術のコレクションには、明治や大正期の洋画の優品もあるのが特徴です。都現代美術館は休館中ですが、現在、都美術館で所蔵品展が開かれており、写実を追究した近代画家の作品を見ることができます。

 清宮彬(せいみやひとし)(1886~1969)は洋画研究所で学び、そこで岸田劉生に出会って親交を結びます。「静物」は、壺(つぼ)やグラス、レモンの不思議な配置が目を引きませんか。それらが薄暗い室内の光の中にひっそりとたたずみ、静謐(せいひつ)で穏やかな空気を醸し出しています。油彩画が身近な存在になっていたのがうかがえます。

 精緻(せいち)な細密描写で当時の人を驚かせたのは、河野通勢(こうのみちせい)(1895~1950)です。正式に美術学校では学んでいませんが、父・次郎が洋画家で教育者だったため、自然と洋画に親しみました。水彩「柏の葉」からは、枯れ葉のかさかさとした感じが伝わってきます。画面右上のサインは、15~16世紀にかけて描かれた北方ルネサンス絵画に倣ったものです。

 大正期になると、西洋画を意識しながらも、身近なものをじっくり描くことを楽しんでいたように思います。

(聞き手・牧野祥)


 どんなコレクション?

 戦後美術を体系的に集めるとともに、注目の若手作家の作品収集にも努めている東京都現代美術館。1945年以降の国内外の現代美術を中心に、約5千点を所蔵する。東京都美術館から引き継いだのは、そのうちの約3千点で、その中には浅井忠や岸田劉生らの近代洋画も含まれている。2018年度中にリニューアルオープン予定。問い合わせは都現代美術館リニューアル準備室(03・5633・5860)。

◆「東京都現代美術館所蔵 近代の写実展」 1月6日(土)までの午前9時半~午後5時半((金)は8時まで。入場は30分前まで)、東京都台東区上野公園の都美術館(TEL03・3823・6921)。(月)と12月31日、1月1日休み。

児島さん

実践女子大教授 児島薫

 こじま・かおる 東京大大学院修士課程修了、修士号取得。ロンドン芸術大で博士号取得。東京国立近代美術館研究員などを経て現職。専門は日本近代美術史。特に官展の作家と美人画について研究。著書に「藤島武二」ほか。

(2017年12月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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