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吉原木芸@栃木・鹿沼

組み方無限 挑む3兄弟

左から幸二さん、秀美さん、次男直幸さん(46)。右端の三男友也さん(43)が持つ花器カバーは約30万円
左から幸二さん、秀美さん、次男直幸さん(46)。右端の三男友也さん(43)が持つ花器カバーは約30万円
左から幸二さん、秀美さん、次男直幸さん(46)。右端の三男友也さん(43)が持つ花器カバーは約30万円 木曽ヒノキを使い、機械で寸分たがわず裁断した木片を、金づちで組み上げる

 木工の町、栃木県鹿沼市。江戸時代、日光東照宮の造営や修繕で全国から集められた宮大工がこの町に滞在し、地元に技術を伝えたのが始まりとされる。主に障子や欄間に取り入れられる木工細工「鹿沼組子」も、職人らの手によって代々受け継がれ、育まれてきた。釘を使わず、切り込みを合わせて作る模様が、繊細で美しい。

 「模様は組み方次第で無限にできるよ」と、吉原木芸の親方・吉原幸二さん(69)。19歳で市内の工房へ弟子入りし、32歳で独立した。同じ幾何学模様が連なるデザインが一般的だが、吉原さんの特技は、枠いっぱいに多彩な模様を使い分け、まるで風景画のように、山や雲、湖などを表現すること。作品は、高級旅館や美術館にも採用されている。

 昭和40年代までは、市内に数十軒ほどあったという組子の工房も、和室の減少とともに次々と廃業し、鹿沼建具商工組合に所属するのは現在3軒。鹿沼組子の行く末は、後継者の吉原3兄弟らが担う。長男の秀美さん(48)は「伝統技で、新たな製品開発にも挑戦したい」。

(文・写真 渡辺香)


 ◆栃木県鹿沼市仁神堂51の1(TEL0289・65・4600)。午前8時半~午後5時半。土・日・祝定休。鹿沼駅。

(2017年5月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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