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浜松屋@箱根

幾何学模様を無限に展開

作業をする石川一郎さんの前に麻の葉の模様を形作る種木が置かれている
作業をする石川一郎さんの前に麻の葉の模様を形作る種木が置かれている
作業をする石川一郎さんの前に麻の葉の模様を形作る種木が置かれている 引き出し1万3500円、弟の石川善弘さん(59)が作る木象嵌(もくぞうがん)のリモコンラック7500円(左から)

 箱根寄木細工は、旧東海道沿いにある箱根・畑宿(はたじゅく)で、指物師の石川仁兵衛(にへえ)が旅人の土産品として作り始めたという。天然木の様々な色や木目を寄せ合わせることで幾何学模様を生み出し、箱や器を装飾する木工芸品だ。

 畑宿の本陣跡前で約100年続く店が「浜松屋」。仁兵衛から数えて5代目が創業した。訪れると孫で7代目の石川一郎さん(62)が見学者を前に実演中だった。底面が三角形や菱(ひし)形などの角柱を組み合わせ、鉋(かんな)で表面を削り出す。断面に厚さ0・2ミリの美しい幾何学模様が現れると歓声が上がった。薄くそいだ経木を箱などに貼る「ズク貼り」、角柱を組み合わせた種木を彫って器などに加工する「無垢(むく)」という2技法を用いる。木と向き合って約40年。「いくらやっても難しい。幾何学模様を無限に展開できるのが魅力だね」

 戦後の最盛期の1983年、箱根、小田原にあった工房は30軒ほど。翌年、国の伝統的工芸品に指定された。今は15軒が残り、石川さんの甥(おい)の石川裕貴さん(33)ら若手職人が新たな意匠に取り組んでいる。

(文・写真 石井広子)


 ◆神奈川県箱根町畑宿227(問い合わせは0460・85・7044)。午前9時~午後5時。無休。箱根湯本駅からバス。

(2017年6月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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