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越後屋@神田

豆腐の風味引き立つ大釜炊き

3代目の義昭さん(左)と妻の洋子さん
3代目の義昭さん(左)と妻の洋子さん
3代目の義昭さん(左)と妻の洋子さん 15年前に考案したヒット作「バケツ豆腐」。1人前160円。写真は約10人前1800円。要予約。コーンや七味の変わり種も

 JR神田駅のちかく、ビルの谷間に、看板建築の豆腐店がたたずむ。創業は明治後期。江戸から昭和にかけて、このあたりには東京ドーム約1個分の広さの青物市場があり、初代は地の利を生かそうとこの場所に店を開いた。

 現在は、3代目の石川義昭さん(74)が当時の製法のままに豆腐を作る。真っ先に見せてくれた仕事道具が、先代からの大きな釜だ。一晩水に浸した大豆を砕き、大釜で煮る。そのことで大豆の甘さがいきた豆腐になるという。焼き豆腐は香ばしい風味を出すため、炭火で表面をあぶっている。

 材料は大豆とにがりだけ。義昭さんはおいしい素材探しにも熱心だ。その中で見つけた山形産の高級な青大豆を、毎週火曜限定で使っている。朝から夕方まで、近隣の住民や会社で働くサラリーマンなどがひっきりなしに訪れる。

 妻の洋子さん(72)と二人三脚で店を営んできたが、10年前に次男の賢治さん(35)が店を継ぐことを決めた。「うれしかった。越後屋の豆腐が食べたいと言ってもらえる限り、続けていきたい」と義昭さん。

(文・写真 西村和美)


 ◆東京都千代田区神田多町2の1の4(TEL03・3251・9676)。午前7時~午後6時((土)は1時まで)。(日)(祝)休み。神田駅。

(2017年9月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)