読んでたのしい、当たってうれしい。

現在
59プレゼント

餅甚@大森

300年作り続ける「あべ川餅」

店先に立つ福本義一さん(左)と義孝さん。店内には、団子や生菓子、おこわなどが並ぶ
店先に立つ福本義一さん(左)と義孝さん。店内には、団子や生菓子、おこわなどが並ぶ
店先に立つ福本義一さん(左)と義孝さん。店内には、団子や生菓子、おこわなどが並ぶ 「あべ川餅」は18個入り670円から。黒蜜ときな粉は別添で、好みの量をかけられる

 東京・大森の旧東海道沿いに店を構える和菓子屋「餅甚」。現在の静岡県中部にあたる駿河国から来た初代が、1716(享保元)年に茶店として創業した。明治時代に茶店から和菓子屋に。看板商品は、創業時から作り続ける「あべ川餅」だ。

 静岡市の安倍川近くが発祥地とされる「安倍川もち」。江戸時代には、街道を往来する旅人のために府中宿の茶店などで出されていた。静岡名物として知られる安倍川もちは、きな粉をまぶすか、あんを絡めるのが一般的だが、餅甚では黒蜜ときな粉で食べる。

 その日の朝ついた餅は翌日でも軟らかい。その理由は「つく回数を多くしているからね」と10代目の福本義一さん(73)。毎日、一口大の平たい丸餅を1500~2千個作る。秘伝の黒蜜は、今は、息子で11代目の義孝さん(39)が味を守っている。

 周辺はかつてノリ養殖で栄え、生産者も「網にノリがたくさんつくように」と縁起を担いで食べたという。義一さんは「地域と共に歩んできた。今後も地道に続けていきたいね」。

(文・写真 牧野祥)


 ◆東京都大田区大森東1の4の3(TEL03・3761・6196)。午前8時半~午後7時。(火)休み。平和島駅。

(2018年1月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ