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いけだ屋@埼玉県草加市

お米の風味詰まった 草加煎餅

型を抜いて煎餅の元となる生地を作る
型を抜いて煎餅の元となる生地を作る
型を抜いて煎餅の元となる生地を作る 押し瓦で押し、手製の金属の箸を休みなく動かす。出来たての手焼き煎餅は午後1時以降、茶店で食べられる。1枚108円

 江戸時代に宿場町だった草加。名物「草加煎餅(せんべい)」は当時の茶店(ちゃみせ)で余った団子を平らに潰したのが起源と伝えられる。

 旧日光街道沿いにあるいけだ屋は1865年創業。それまで営んでいた団子店から明治期に煎餅業に転身した。太平洋戦争中に物資不足のため、県から通知を受けて廃業したが、1953年に再開。現在は工場生産と並行して、手焼きにもこだわる。4代目の池田国雄さん(78)は「この街で先祖が続けてきた本物の味を後世に伝えたい」と話す。

 草加煎餅の特徴は硬くて平らな「堅(かた)焼き」だ。県産のうるち米をせいろで蒸し、ついた生地を備長炭であぶると餅のように膨らむ。それを市の伝統産業技士が「押し瓦」というコテで押し潰す。何度もひっくり返し、空気に触れさせる。そうすることで米の風味がぎゅっと詰まる。出来たてはしょうゆの香りがして、艶々(つやつや)と光っている。

 3年前に敷地内にオープンした、出来たてを食べられる店には地域の人が集う。5代目の彰さん(47)は「私なりの『街道筋の茶店』」と笑う。

(文・写真 井上優子)


 ◆埼玉県草加市吉町4の1の40(TEL048・922・2061)。本店は午前9時~午後7時。茶店は10時~5時。不定休。谷塚駅。

(2018年2月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)