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弘前駅(青森県、JR奥羽線ほか)

みんなの言葉が集まる黒板

ファイルをのぞきこんだ後、消されたばかりのボードに真っ先に書き込む少年たち=青森県弘前市表町
ファイルをのぞきこんだ後、消されたばかりのボードに真っ先に書き込む少年たち=青森県弘前市表町
ファイルをのぞきこんだ後、消されたばかりのボードに真っ先に書き込む少年たち=青森県弘前市表町 地図

 平日午後。にぎやかな笑い声が駅構内に響く。地元の女子高生ら3人が、列車の待ち時間に、男の子のイラストを小さな黒板に描き込んでいた。「暇つぶし」と、はにかんで笑う。

 全国有数のリンゴ生産地で、桜の名所として知られる弘前市。玄関口であるJR弘前駅の改札近くにリンゴ型の黒板が二つ並ぶ。その名も「思ひ出ひろひろボード」だ。昨年9月、駅職員らが設置した。駅長の橋本大一さん(57)によれば、きっかけは遊び心だという。かつて普及した駅の伝言板。連絡手段が多様な今の時代に、あえて置いてみたら面白いんじゃないか。木板で葉を作って付けるなど工夫をこらした。橋本駅長は「物があふれる今、手作りが温かい。駅って面白いと感じてもらえれば」と期待する。

 「兵庫県あわじ島より来ました」「弘前また来たい」。書き込みは予想以上に多い。駅員でボード名考案者の太田篤さん(32)は「公共の場で自分の思いを書くことはあまりないから、新鮮だったのでは」と考える。「自由に楽しんでほしい」と制約を設けないせいか、伝言というより、今日の出来事や明日への意気込みなど思い思いの言葉であふれる。

 ボードは満杯になると、撮影し、ファイルに入れて下にぶらさげている。観光客も地元の人も、思わず足を止めていた。「今日、東京行くよ 弘前としばらくおわかれ!」。中には人生を垣間見る一文もある。

文 神谷実里撮影 谷本結利 

 沿線ぶらり  

 JR奥羽線は福島駅(福島市)と青森駅(青森市)との間を結ぶ484.5キロ。弘前駅は弘南鉄道弘南線の起点駅でもある。

 約100年ぶりの石垣修理で、天守が移動した弘前城がある弘前公園へはバスで15分程度。園内の武徳殿では、殿や姫の衣装の着付け体験を実施(4月以降は有料)。問い合わせは弘前市みどりの協会(0172・33・8733)。

 大浴場(有料)などがある複合施設、鰐come(わにかむ、TEL49・1126)では、大鰐温泉もやしを使った「うまか丼」(880円)が人気。2駅隣の大鰐温泉駅からすぐ。第3(木)休み。

 

興味津々
ばっちゃ御前

 JR改札前では津軽の味が楽しめる「津軽弁」を各種販売。ゲソと野菜を混ぜて焼いた「いがめんち」などを詰めたばっちゃ御膳写真、1080円)ほか。午前8時半ごろから販売開始、無くなり次第終了。問い合わせは津軽振興会(070・5326・7771)。

(2016年2月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)