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「承徳喇嘛廟(らまびょう)」

日本で洋画、どこまで洋画?展(愛知県美術館)

 


美博ノート
1938年

 

 新しい絵画表現をひたむきに西洋に学んだ、明治の洋画草創期。海外に留学する画家が現れ、アカデミックな画風が持ち帰られた。以降、印象主義、フォービスム、キュービスム……多様な表現が日本に流れ込む。「絵を見ると、その画家が誰に影響されたか分かることも多いんです」と学芸員の久保田有寿(あず)さん。

 明治から昭和の画家、安井曽太郎も渡仏した一人だ。展示室に並ぶ「婦人像」(1912年ごろ)には、陰影が強調された暗い色調にセザンヌの影響が表れているという。しかし30年近く経った帰国後の本作は一転、中国の寺院がデフォルメされ、おおらかに描かれる。「陰影をつけず色彩が軽やかで、東洋的な装飾性がある」と久保田さん。安井は模索の時期を経て、日本独自の洋画表現を生み出した。

(2016年12月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)