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小森邦衛「真塗円盆(しんぬりまるぼん)」

天然黒ぐろ 鉄と炭素のものがたり(INAXライブミュージアム)

小森邦衛「真塗円盆(しんぬりまるぼん)」
2017年

 漆黒とは、艶(つや)めく黒色のことをいう。漆塗りの本作「真塗丸盆」は、まさに漆黒の奥深さが味わえる一品。「塗り立て」という技法が用いられている。

 漆は、精製した樹液をかき混ぜ、加熱して水分を除く過程で黒くなる。水分が残っているうちに、水酸化鉄を加えると、黒がさらに深みを増す。人毛で作られた漆刷毛(ばけ)で、漆を幾度も塗り重ね、刷毛の跡が残らないよう、均等に仕上げたのが「塗り立て」だ。

 さらに蒔絵(まきえ)など、より平滑さを求める際には、器物の表面をアブラギリの木を焼いた炭で研ぐ「蝋色(ろいろ)仕上げ」を行う。最後は、手のひらで微調整しながら漆で凹凸を埋めて磨き上げると、鏡面のように滑らかな漆黒が生まれる。「漆黒には、職人の知恵と技が込められている」と学芸員の水野慶子さん。

(2018年1月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)