今回から2回にわたり、銀座と築地に挟まれた東銀座の味さんぽをお送りします。東銀座といえば、なにより有名なのは歌舞伎座。リニューアルされてから観光客が激増していますが、ちょっと脇道を入ると昔ながらの個人経営の名店もちらほら。決して派手ではないけれど、お散歩していても飽きることがないエリアです。
そんななかでもオススメは、歌舞伎座右脇の路地を京橋方向に進むと左側に見えてくる「喫茶 アメリカン」。ぱっと見は、こぢんまりとした喫茶店ですが、実は手づくりサンドイッチでとても有名なお店なのです。
「有名」の根拠は、ずばりボリュームにあります。なにしろパンの厚みは、一般的な6枚切り食パンの2倍くらい。挟み込まれた具の量も、ひとくち食べるごとにあふれてしまうほどです。テークアウトメニューは2切れで1パックになっているのですが、女性だと1パックを食べきるのはかなり大変かも。
ちなみに一番人気はタマゴサンドですが、タマゴサンド単体で売られてはおらず、「タマゴポテト」「ツナタマゴ」「ハンバーグポテト」「ハンバーグタマゴ」(各450円)など、2種が1パックになっています。理由は、「2種類の味を楽しんでほしいから」。
そう話してくださったオーナーシェフの原口誠さん(62歳)が、食品メーカーから脱サラしてお店を開いたのは1983年のこと。サンドイッチは当時から人気メニューでしたが、おなかいっぱい食べてほしいという思いから、年月を重ねるごとにボリュームがどんどん増していったのだそうです。特に歌舞伎座の工事中は、建設作業に携わる方々が毎日買いに来たため、ボリュームアップにさらに勢いがついたのだとか。
しかも、単に量が多いだけではありません。たとえば大量に使用されるタマゴは、原口さんが何時間もかけて手作業で裏ごしして仕上げたもの。驚くほどクリーミーなのは、「女性にはできない」ほどの強い力が必要だからだそうです。ちょっと懐かしい、クセになる味。「素材はぜいたくに、手間を惜しまず。だから全然もうかりませんよ」と原口さんは笑いますが、夜明け前から仕込みをしているからこそ、味に深みを出せるのかもしれません。
ちなみに店名の由来は、原口さんがアメリカン・カルチャーの影響を受けてきた世代だから。店内のBGMも、1970年代を中心としたアメリカンロックやポップスと徹底しています。そういえば、スケールの大きなものが「アメリカン」と表現されていますが、「アメリカン」のサンドイッチも、まさに「アメリカンサイズ」そのものですね。
(印南敦史)
■喫茶 アメリカン
東京都中央区銀座4-11-7
TEL:03-3542-0922
営業時間:午前7:30~午後3:30
休み:土曜・日曜・祝日
店内で食べられるランチメニューの「サンドイッチセット」(1100円)は、好きなサンドイッチと飲みものを選べるだけでなく、コーンスープとサラダもついてくる。