十和田市内の中心部、官庁街通りを歩くと、突如カラフルな花をまとった馬の像が現れた。十和田市現代美術館の白い建物を背にして立ち上がったその姿は、全長5・5メートルと巨大ながらも威圧感は無く、むしろ可愛らしい。よく見ると蹄鉄(ていてつ)部分が一輪の赤いバラで笑みを誘う。
韓国の作家チェ・ジョンファ(55)が、2008年の同美術館のオープンに合わせて制作した。彼は事前に何度も同市に足を運び、地元住民と交流した。その中で、十和田市周辺は古来より馬産地として有名で、明治から第2次大戦にかけて美術館の近くに軍馬の育成施設「軍馬補充部三本木支部」があったことを知り、モチーフを馬に決めた。韓国に戻っての制作期間は約6カ月。繊維強化プラスチックで作った馬に咲かせたのは、世界中の花だ。「花があれば世界は美しい。芸術になる」と語り、「官庁街通りは桜並木が有名。世界と日本の花を重なり合わせたかった」。
同市在住の田谷希怜(きさと)さん(28)と娘の優奈ちゃん(4)が散歩がてらにフラワー・ホースを見に来ていた。「ちょっとかわいい」。優奈ちゃんは見上げてはにかんだ。「娘が小さいので展覧会には行けない。でも気兼ねなくアートを楽しめるのはうれしいですね」と希怜さん。
官庁街通りの桜並木が咲いた。世界と日本の花の競演のはじまりだ。
(西村和美)
アート広場 美術館の向かいにある、エルヴィン・ヴルムら著名な現代美術家6組の作品が集まった「アート広場」は、2005年に発足した市内をアートで活性化する「アーツ・トワダ」の一環。内部で映像を上映する作品(午前9時~午後5時)もある。 《アクセス》 JR八戸駅からバスで1時間14分(バスは1日14本、(土)(日)(祝)は運休あり)。車は八戸自動車道を経て百石道路下田百石インターより約40分。 |
市内から車で10分。十和田市馬事公苑(TEL0176・26・2100)は、乗馬体験や巨大な馬形の遊具で遊ぶことができる。園内の称徳館では八つのコーナーで、かつて馬産地であった十和田の歴史や、馬にまつわる文化を学べる。
同市発祥のご当地グルメと言えば十和田バラ焼き=写真。牛バラ肉とタマネギを専用の鉄板で焼き、甘辛いタレで味付けする。十和田市現代美術館から徒歩2分の司 バラ焼き大衆食堂(TEL080・6059・8015)では、バラ焼きを自分で焼いて楽しめる。オリジナルのタレは店内で販売もしている。