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無題 
キース・へリング作(福岡市中央区)

人と環境に寄り添う「犬」

鮮やかな色で玩具っぽさを表現したという=伊藤菜々子撮影
鮮やかな色で玩具っぽさを表現したという=伊藤菜々子撮影
鮮やかな色で玩具っぽさを表現したという=伊藤菜々子撮影 JR博多駅前広場にあるヘンリー・ムーアの彫刻作品「着衣の横たわる母と子」

 高さ4メートルの「赤い犬」は空を見上げ、すっくと立っていた。福岡の繁華街・天神のほど近く。市民の健康づくりをサポートする「あいれふ」ビル前の緑地帯。米国の現代芸術家キース・ヘリング(1958~90)の最大級の野外彫刻「無題」だ。

 キースは80年代初頭、ニューヨーク市内の地下鉄構内にある黒い広告用看板にチョークで描いたグラフィティアート(落書き)で、一躍有名になった。「アートは大衆のもの。日常生活につながっていなくては」というのが持論で、エイズのため31歳で亡くなるまで、多くの人の目に入る場所で、愛と平和へのメッセージを表現し続けた。

 「無題」にもその思想は込められている。子どもがぶら下がってもいいように台座はとりつけず、自由に触れるようにした。「公共の場の彫刻は、その場になじんでないとダメだ。環境や地域の中で役割を持つべきなんだ」という言葉の通りに。

 本作が福岡にやってきたのは死後の94年のこと。同年に完成した「あいれふ」のランドマークになる彫刻として米国の個人所蔵家から福岡市が買い受け、海を渡ってきた。95年には、市民の応募・推薦をもとに選ばれる「福岡市都市景観賞」も受賞。今やすっかり街の顔だ。「小さい頃から見てきて親しみがあります」と坂田ヒカルさん(15)。キースの思いは、異国の地でも生き続けている。

(大野紗弥佳)

 あいれふ

 福岡市民の健康づくりを目的として94年に開館。最上階の「あいれふホール」では、講演会やコンサートなどを開催する。施設内外には、草間彌生の「三つの帽子」や、母里聖徳の「ドラムマン」などのモニュメントも。他にも、福岡市は「彫刻のあるまちづくり」をめざし、計25体のパブリックアートを市内各所に設置している。

 《作品へのアクセス》 赤坂駅から徒歩4分。


ぶらり発見

釜だれとんこつラーメン

 博多駅からバスで約25分。福岡市早良区の臨海都市「シーサイドももち」では高さ234メートルの福岡タワーがお出迎え。地上123メートルの展望室から見える夜景は、全国の愛好家による「夜景100選」に選ばれている。8月28日(日)まで、色とりどりの金魚が泳ぐ様子を表現した「アクアリウムイルミネーション」が楽しめる(25日(木)を除く)。

 とんこつラーメンで知られる一蘭(TEL092・713・6631)は1960年に創業。天神西通り店限定の「釜だれとんこつラーメン」(写真、790円)は、特製のタレがスープに深いコクを与える一品だ。重箱風の四角い器が特徴。

(2016年8月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)