埋め立て地へ続く大きな橋を渡ると、左右に原色で彩られた城のような建物と金のドームを頂いたタワーが現れた。
「初めて見たときは衝撃やった。ごみ処理場と聞いて、大阪人の度胸を感じた」と見学に来ていた大阪府内在住の南秀樹さん(61)が言うように、よもや公共施設とは思えない。
大阪北港(ほっこう)の人工島舞洲(まいしま)にある、舞洲工場と舞洲スラッジセンター。外観をデザインしたのは、オーストリア出身の芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトバッサー(1928~2000)だ。無味乾燥になりがちな工場の壁面は赤や黄のストライプなど鮮やかな配色に。屋根や柱が丸みを帯びているのは、「自然界には直線や同一のものはない」という哲学からだ。
彼が手がけたウィーンのごみ焼却場の評判を聞いた市が1997年に舞洲工場のデザインを依頼した。工場長の村上真也さん(57)は「マイナスイメージの強いごみ焼却場を『見てもらう工場』にしたかった」と話す。見学コースに工夫を凝らし、環境教育施設として充実させた。海外からも含めて年間1万人以上が訪れる。
稼働して15年。自然回帰の願いを込めた草木は、より繁茂し、壁をつたい、窓から飛び出す。「バッサーさんの理想に近づいていますわ」と村上さんは目を細めた。
(井上優子)
舞洲 面積約220ヘクタールの人工島。物流・環境ゾーンにある舞洲工場(TEL06・6463・4153)は、大阪市など3市のごみを年間約90万トン焼却する。舞洲スラッジセンター(TEL6460・2830)は市内の下水処理場から集めた汚泥を年間約10万トン燃焼・溶融し、有効活用する。いずれも見学が可能(事前に各施設に電話申し込み)。 《作品へのアクセス》 JR桜島駅からバスで7分。 |
工場からバスで8分の舞洲陶芸館(TEL06・6463・7282)は関西最大級の登り窯を持つ。海底トンネル工事で掘り出した粘土を使った「難波津焼(なにわづやき)」の作品が並ぶ。電動ろくろや手びねり、絵付けなどの陶芸体験(写真、1620円~3780円)も。館内の「カフェ舞土(まいど)」では難波津焼の陶器でコーヒーやビール、軽食を楽しめる。
帰りには同じ此花区内にある源泉かけ流しの上方温泉一休(TEL6467・1519)でゆっくり。750円((土)(日)(祝)850円)。西九条駅からの無料送迎バスあり。第3(火)休み。