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天女(まごころ)像 
佐藤玄々作(東京都中央区)

まごころのシンボル

迫力ある天女像をカメラに収めようと訪れる客も多い=山本倫子撮影
迫力ある天女像をカメラに収めようと訪れる客も多い=山本倫子撮影
迫力ある天女像をカメラに収めようと訪れる客も多い=山本倫子撮影 1914年に設置されたライオン像は英国の彫刻家メリフィールド作=山本倫子撮影

 年の瀬を迎え、買い物客でにぎわう三越日本橋本店。吹き抜けの中央ホールでひときわ存在感を放つのが、極彩色の木彫「天女像」だ。「株式会社三越」の創立50周年を記念し1960年に設置された。「三越の基本理念、まごころを象徴する作品です」と三越伊勢丹ホールディングスの森正弘さん(57)。

 高さは約11メートル、吹き抜けの4階まで達する。総重量は約6・8トン。瑞雲(ずいうん)に包まれた美しい天女が花芯に降り立つ姿だ。中心部の天女には京都・貴船神社山中の樹齢約500年のヒノキが使われ、合成樹脂で溶いた岩絵の具で彩色されている。

 作者は近代木彫の鬼才と呼ばれた佐藤玄々(1888~1963)だ。51年に、制作期間2年、工費400万円の予定で依頼されたが、制作が進むにつれて作品に対する玄々の思い入れは強くなった。天女像は巨大化し、完成したのは約10年後、当時の金額で数億~数十億円を費やしたという。

 玄々がアトリエを構えた京都・妙心寺の大心院を管理する津田永子さん(74)は、小学生の頃から制作を見守っていた。「多い時でお弟子さんやお手伝いさんなど90人ほどの関係者がいました」。天女像が完成して3年後、玄々は大心院で息を引き取った。「完成してほっとされたのでしょうか」。熱い魂が込められた天女は今日も三越で微笑んでいる。

(笹木菜々子)

 三越日本橋本店

 ルネサンス様式を誇る三越日本橋本店本館の現在の建物は、6年間の増改修を経て1935年に完成。天女像がある中央ホールでは、毎週水、金、土、日曜日の午前10時半、正午、午後3時の1日3回、2階バルコニーに設置されたパイプオルガンの生演奏が行われている。正面入り口にある2体のライオン像は、誰にも見られずに背にまたがると願いがかなうと言われ、受験生の間で人気があるという。


ぶらり発見

福徳の森

 三越前駅から徒歩3分の日本橋鮒佐本店(TEL0120・273123)は、150年以上続くつくだ煮店。辛口つくだ煮の定番3種類(昆布、ゴボウ、アサリ)が試せる「ぶぶ漬けセット」(115グラム、999円)は、ご飯のお供にぴったり。昆布とカツオの合わせだしパックも付いている。

 福徳神社に隣接する広場福徳の森は今年9月に完成した。イルミネーションが、流れ星に連動して変化するイベントを1月9日まで開催中だ。毎日午後5時~11時(9日は9時まで)。問い合わせは日本橋案内所(03・3242・0010)。

(2016年12月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)