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緑のラブレター 
高橋政行作(相模原市緑区)

自然からのプロポーズ

白い「封筒」はテントなどに使われるシートが素材=谷本結利撮影
白い「封筒」はテントなどに使われるシートが素材=谷本結利撮影
白い「封筒」はテントなどに使われるシートが素材=谷本結利撮影 近くには、フェリット・オズシェン作「雨」がある=谷本結利撮影

 JR中央線が藤野駅に近づくと、山の中腹に巨大なラブレターが現れた。

 作品は縦17メートル、横26メートル。鉄のフレームにシートが張られている。「ふるさと芸術村構想」のもと、藤野町(現相模原市)の依頼で、1989年に造形作家の高橋政行さん(67)が制作した。作品の意味をたずねると、「自然から人に向けた愛のメッセージ。その愛は時に厳しいですけどね」と高橋さん。

 予備校時代、学生運動を間近に見て、「NOではなく、答えを生み出すアートを模索したい」と思ったという。人間を含む自然をテーマにすべく、30歳で藤野に移住。畑仕事と制作を両立する暮らしを始めたが、都会育ちには試練の日々だった。作物はイノシシにやられ、雪が降ると外に出られない。それでも地元の人たちは自然に感謝し、畑や山で作業していた。作品には、そんな自然の姿が投影されている。「ラブレター」をよく見ると、手の形に切り取られた部分がある。その穴からのぞく山の緑が作品の一部なのだ。

 藤野町に住んで作家活動をする人は300人にまで増えたという。他にも、森の間伐、自家発電に取り組む人も。86年から、移住を世話する元役場職員の中村賢一さん(65)は「面白い人が次々と集まってくる」と笑う。自然からのプロポーズは、町にいくつもの答えを芽吹かせている。

(井上優子)

 藤野ふるさと芸術村

 第2次大戦中、藤田嗣治や猪熊弦一郎らが過ごした藤野。1988年に神奈川県が「藤野ふるさと芸術村メッセージ事業」を立ち上げ、国内外の作家による彫刻などを町内に展示した。当時の作品を含む29作品が、藤野駅周辺に今も残る。現在は、「ぐるっと陶器市」(毎年5月)など民間主体のイベントがさかんで、作家が活躍できる場も多い。

 《作品へのアクセス》JR藤野駅から徒歩20分。


ぶらり発見

エレファント・マーケット

 源泉かけ流しのふじの温泉 東尾垂(おたる)の湯(TEL042・689・2360)は、藤野駅から無料送迎バスが出て便利。560円((土)(日)(祝)は880円)。

 駅からバスで10分のふじのアート・ヴィレッジでは、草木染め作家らが作品を展示販売する((土)(日)のみ)。毎月第4(土)(日)は、「エレファント・マーケット」=写真=を開催。クラフトショップやコーヒー店が並ぶ。敷地内の藤平(とうへい)ピザ(TEL080・2254・5253)では、木のテーブルであつあつピザ(1000円から)を。(金)(土)(日)の午前11時~午後3時半。

(2017年3月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)