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爬虫類(はちゅうるい) THE REPTILES 
田辺光彰作(さいたま市中央区)

新都心に現れた「守り神」

大きさに圧倒されるが、その瞳はどこか優しい=飯塚悟撮影
大きさに圧倒されるが、その瞳はどこか優しい=飯塚悟撮影
大きさに圧倒されるが、その瞳はどこか優しい=飯塚悟撮影 共生空間Psi(サイ)と小学生280人による10作品のひとつ「ほしにすむ」=飯塚悟撮影

 通勤客が足早に行き交う広場に突如現れたのは、全長11メートルの巨大なトカゲの彫刻。ステンレス製の銀色の姿が目をひく。

 2000年、首都機能を分散させる「業務核都市」構想により誕生した街、さいたま新都心。建設省、郵政省、簡易保険福祉事業団(いずれも当時)がアートプロジェクトを実施し、「やすらぎ」や「くつろぎ」などをテーマにした作品15件を合同庁舎付近の各所に配置した。

 1号館前の「月のひろば」にある本作を手がけたのは、彫刻家・田辺光彰(みつあき)(1939~2015)。古来の生物を題材にした作品を数多く残した。それにしても、新都心になぜトカゲが? 長男で田辺光彰美術館学芸員の陵光(たかみつ)さん(47)が謎解きしてくれた。「害虫を食べるトカゲは、東南アジアの一部では稲作を守る神格化された存在なので、新しい街の安寧を守る象徴として選ばれたのです」

 制作は、木製の小型模型を基に行われ、ステンレスの板をパーツ別に加工したものを溶接した。爪や胴体などの丸みを出すには、熟練の技を要する。「ステンレスは屋外でも耐久性が高く、後の世まで残る。そこに、父は古(いにしえ)から存在し続けているトカゲとの共通点を感じていたようです」と陵光さん。

 日曜日、トカゲの前で親子が昼食を楽しんでいた。都会のトカゲは街の暮らしを静かに見守っているようだった。

(下島智子)

 さいたま新都心合同庁舎

 2000年、国の10省庁18機関(当時)が都内から移転し、開庁。国土交通省、財務省などの関東甲信越地方を管轄する行政機関の拠点となっている。

 1号館前「月のひろば」には、本作のほかに「月夜見」「モーレソースの丘」「Untitled」の3件を配置。地球をかたどったブロンズ像「ほしにすむ」はさいたま新都心駅から合同庁舎などにつながるペデストリアンデッキ上にある。

 《アクセス》さいたま新都心駅から徒歩3分。


ぶらり発見

「貴婦人のくちびる」「おかしさんの住人たち」

 さいたま新都心駅から徒歩15分、造幣局さいたま支局(TEL048・645・5899)では、併設の造幣さいたま博物館で、貨幣や古銭、勲章など約千点を展示。プルーフ貨幣や勲章の製造工程を見られる工場見学も。午前9時~午後4時半(入館は30分前まで)。工場見学は原則(土)(日)(祝)休み。

 同駅から徒歩10分の菓子店、おかしさん本店(TEL607・1983)は「空想菓子店」がテーマ。「貴婦人のくちびる」「おかしさんの住人たち」=写真=など個性的な名前とビジュアルのクッキーなどが並ぶ。不定休。

(2017年10月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)