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擬音の石彫オブジェ 
馬渕洋作(石川県羽咋(はくい)市)

駅前に佇むカタカナの塊

作品の上でポーズをとる地元の女子高生=滝沢美穂子撮影
作品の上でポーズをとる地元の女子高生=滝沢美穂子撮影
作品の上でポーズをとる地元の女子高生=滝沢美穂子撮影 「ズ」が七つ。まるで沈み込むかのように右肩下がりに並ぶ=滝沢美穂子撮影

 雲一つない青空のもと、満面の笑みで写真に納まる女子高生。ポーズをとる足元では、カタカナの塊「ジャーン!」が異彩を放っていた。

 石川県の能登半島南部を縦断するJR七尾線。停車駅の羽咋駅前に佇(たたず)む御影石のオブジェは、2005年3月、駅前とその先に続く商店街の活性化のために設置されたもので、およそ高さ1メートル、横幅2・6メートル、奥行き1・1メートル、5トンもの大きさだ。

 作者は、兵庫県明石市在住の彫刻家、馬渕洋さん(48)。石川県小松市にアトリエを構えていた1999年に制作した。それまでは抽象的な作品を手がけていたが、見る人誰もが分かる「端的な作品」を追究したら、ある日、擬音をモチーフにするアイデアが「ジャーン!」のごとくひらめいたという。故郷の明石市に戻る際、巨大な作品の運搬に困り、引き取り手を探していると、羽咋駅前通り商店街が名乗りを上げた。

 設置に関わった精肉店経営の番匠(ばんしょう)久雄さん(60)は「羽咋駅を訪れた人に、楽しんでもらいたかった」と経緯を振り返る。作品の裏側には階段が施され、そこから上って記念撮影ができる。「作品は脇役」と話す馬渕さんが、鑑賞する人が主役になれるようにと工夫を凝らした。作品は、テレビ番組で紹介されるとじわじわ話題に。撮影に訪れる若者が今も絶えないという。

(尾島武子)

 JR羽咋駅

 能登半島の付け根部分に位置する羽咋市にあり、七尾線が通る。和倉温泉発着の特急「サンダーバード」と「能登かがり火」、観光列車「花嫁のれん」が停車し、1日約2600人が利用する。西口ロータリーにある擬音「ジャーン!」のすぐ近くには、同じ作者の「ズズズズズズズ」、駅前からほど近い公園には「ゴゴゴゴゴゴゴ」と「ドドドドドド」の作品も。同市には、自由自在に空を飛ぶ物体を記した江戸時代の古文書が残ることから、「UFOのまち」で町おこしをしている。


ぶらり発見

羽咋米の米粉を使ったジェラート

 宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」(TEL0767・22・9888)は、羽咋駅から徒歩約10分。旧ソ連の月面着陸船予備機の実物などを展示する。午前8時半~午後5時(入場は30分前まで)。400円。3階「コスモシアター」は別途500円。セット券あり。原則(火)休み。

 羽咋駅から車で7分の道の駅「のと千里浜」(TEL22・3891)で、羽咋米の米粉を使ったジェラート(写真、380円~)などが味わえる。午前9時~午後6時(12~3月は5時まで、ジェラートは10時~4時に販売)。(水)と12月30、31日休み。

(2017年11月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)