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瞑想の場〈富士山に捧ぐ〉 
ミッシェル・ポールマン作(長野県富士見町)

世界の感性が集まる森で

1994年設置。高さ約2メートルで下部の台座は、休憩時のテーブルにもなる=高橋知子撮影
1994年設置。高さ約2メートルで下部の台座は、休憩時のテーブルにもなる=高橋知子撮影
1994年設置。高さ約2メートルで下部の台座は、休憩時のテーブルにもなる=高橋知子撮影 同年に設置された、郷晃作「森を歩く正方形」=高橋知子撮影

 うっすら降り積もった雪に足を滑らせながら、岩が転がる急斜面を登り切ると、突然視界がひらけた。

 八ケ岳連峰東南部、標高1420メートルの「富士見高原創造の森」。正面に富士山、右手に南アルプスを一望する森の一角に、長方形の御影石がたたずむ。中央部の縦長の穴は、富士山がのぞける仕掛けだ。作者のドイツ人彫刻家ミッシェル・ポールマンは、日本人が愛する山々と自己の作品との調和を追究した。富士山に堂々と対峙(たいじ)する姿は、全身でその美しさをめでているようにも見える。

 創造の森には、50作品もの彫刻が点在する。すべて石でつくられ、どこか古代文明の遺跡を連想させる。彫刻群は1989年から10年間開催された「富士見高原創造の森 国際彫刻シンポジウム」で設置された。ドイツ、ハンガリー、英国、フランスなど様々な国の作家らが、毎年夏から秋の2カ月間を町で過ごし、制作に励んだ。

 「ここを世界の感性が集まる場所にしたかった」と、シンポジウムのアートディレクターで彫刻家の雨宮一正(いっせい)さん(83)。67年に東西冷戦下の欧州に渡り、多くの作家と出会い共に創作に打ち込んだ。その経験は、この地球上に国を超えた素晴らしい感性があることを教えてくれた。

 富士と世界の感性が融合する森。元旦には、ご来光を拝む多くの人でにぎわう。

(渡辺香)

 富士見高原創造の森 彫刻公園

 富士見高原の一角に1998年に完成した。富士見町役場産業課(TEL0266・62・9228)が管理。本作がある「望岳の丘」へは、リフトで登る方法もある(富士見高原スキー場TEL66・2932、往復550円、4月上旬まで運行)。元旦の午前5時半~8時半、「初日の出リフト」が運行。春から秋は、シラカバ林を眺めながら約25分かけて登る自動運転「天空の遊覧カート」(1台2100円)も。

 《富士見高原スキー場へのアクセス》小淵沢駅から車で10分。


ぶらり発見

ルバーブタルト

 創造の森やスキー場がある八ケ岳富士見高原リゾート(TEL0266・66・2121)には、ゴルフコース、競技場、日帰り温泉・宿泊施設「八峯苑鹿の湯」、貸別荘などもあり、子どもから年配者まで四季を通じて楽しめる。
 自家源泉100%の八峯苑鹿の湯(TEL66・2131)の売店では、「ルバーブタルト」(1620円)が人気。町特産のタデ科の植物ルバーブを、こっくりと甘いタルトにふんだんに練り込んだ。真っ赤な色と酸味がアクセント。

(2017年12月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)