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岩本寺の天井画 
全国の有志のみなさん作(高知県四万十町)

百人百様 手をつないで

格子で区切られた45センチ四方の板絵が横23枚、縦25枚並ぶ様は壮観だ=楠本涼撮影
格子で区切られた45センチ四方の板絵が横23枚、縦25枚並ぶ様は壮観だ=楠本涼撮影
格子で区切られた45センチ四方の板絵が横23枚、縦25枚並ぶ様は壮観だ=楠本涼撮影 日中は自由に出入りでき、地元の人から海外の遍路客まで参拝に訪れる=楠本涼撮影

 四国八十八カ所霊場第37番札所・岩本寺。本堂の天井一面に色とりどりの絵575枚が並ぶ。花々の絵の隣にヨットが浮かぶ風景画、仏画の横に晴れ着姿の女児……。よく見ると、金髪の女優マリリン・モンローや銭形平次、聖母を描いた絵も。

 これらは1978年の本堂改築に合わせて公募し、奉納されたものだ。先代住職と現住職の窪重博(くぼじゅうはく)さん(76)がお遍路さんや参拝客にいつでもオープンに見てもらえるものを置こうと考え、天井画を企画した。まず、45センチ四方の板約600枚を用意。町内の画家岡林流仙(りゅうせん)さんや、ともに美術活動をする教員の渡辺儀太郎さん(いずれも故人)らに相談した。彼らの弟子や知人に手紙を送って呼びかけたところ、県外の檀家(だんか)なども含め、400人近くが応じた。

 世界中から人種や宗教の異なる「様々な人に参拝に来ていただきたい」という気持ちから画題は限定しなかった。3年がかりで集まった575枚の作品は、絵柄も画風もばらばら。それらが天井に飾られる様を、絵集めに奔走した現住職の妻の生喜(みちき)さん(71)は「手をつないで一つの芸術になりました」と表現する。

 寝転んで見る人もいるというので、記者も畳に横になった。お遍路さんが唱える般若心経に耳を澄ませながら、天井に広がる百人百様の思いに想像をめぐらせた。

(井上優子)

 岩本寺

 700年代に神社の別当として置かれたのが起源とされる。800年代に弘法大師が訪ね、五体のご神体を五つの社に分けて安置。明治の神仏分離で五尊を岩本寺に統一した。廃仏毀釈(きしゃく)運動で寺領地の大半を失うが、少しずつ建物を整備し、今では国内外から参拝客が訪れるように。次の38番札所へは約80キロあり、八十八カ所の遍路区間中で最長。予約すれば宿坊も利用可。問い合わせは0880・22・0376。

 《アクセス》窪川駅から徒歩10分。


ぶらり発見

四万十カヌレ

 岩本寺から歩いてすぐの古民家カフェ半平(TEL050・8807・5075)では、自転車の貸し出しを行っている。2時間で400円(保証金1000円が別途必要)。午前8時半~午後4時半。不定休。カフェから西方向へこげば、四万十川に着く。

 カフェから東へ向かい、国道56号を南下すると、アトリエ四万十(TEL0880・22・2380)が見えてくる。人気商品は「四万十カヌレ」(100円~)。仁井田(にいだ)米の米粉や、ラム酒代わりの栗焼酎ダバダ火振(ひぶり)など地元食材を使っている。原則午後2時~7時。不定休。

(2018年1月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)