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麒麟(きりん)像 
渡辺長男作(東京都中央区)

日本橋から飛び立て

阿吽(あうん)2体の麒麟像が並ぶ=谷本結利撮影
阿吽(あうん)2体の麒麟像が並ぶ=谷本結利撮影
阿吽(あうん)2体の麒麟像が並ぶ=谷本結利撮影 渡辺が手がけた獅子像が持つのは東京都の紋章=谷本結利撮影

 日本の道路の起点、日本橋を訪れた。橋の真ん中に、青銅の彫刻「麒麟像」が、堂々たる風格でたたずんでいる。東野圭吾原作の映画「麒麟の翼」の舞台となってから認知度が高まり、この日も、外国人観光客やビジネスマンなど、多くの人がスマホのカメラを向けていた。

 麒麟像は、20代目となる現在の日本橋ができた1911年に誕生した。作者は、彫刻家の渡辺長男(おさお)(1874~1952)。日本近代彫刻の父と呼ばれた朝倉文夫の実兄で、明治天皇騎馬像や菅原道真像など、人物彫刻を数多く手がけた。日本橋の入り口にある獅子像も、渡辺の作品だ。

 麒麟像の高さは約1・5メートル。モチーフは中国に伝わる想像上の動物だ。翼のようなヒレが生えているのは「すべての道のスタート地点として、ここから日本中へ飛び立っていけるように」という願いが込められたためという。

 タウン誌「月刊日本橋」発行人の堺美貴さん(54)は「現在の日本橋は、関東大震災や東京大空襲を耐え抜いた強い橋です。麒麟や獅子は、橋の守り神のように、見守ってくれている気がします」と話す。

 改めて橋を渡ってみた。橋に染みついた人々の思いが足裏から伝わり、麒麟が勇気や希望の象徴に思えた。

(笹木菜々子)

 日本橋

 徳川家康が江戸幕府を開いた1603年に初めて造られ、五街道の起点として定められた。現在は20代目で、長さ49メートル、幅約27メートルの石造りアーチ橋。設計は米元晋一、装飾顧問は建築家の妻木頼黄(よりなか)が手がけた。橋の灯柱には、江戸時代に一里塚の目印として植えられた榎木と、街道沿いに植えられた松のデザインがあしらわれている。1999年には、橋が国の重要文化財に指定された。

 《アクセス》三越前駅から徒歩5分。


ぶらり発見

便箋、封筒、はがきのセット

 日本橋の船着き場から、神田川や東京湾をめぐる日本橋クルーズが楽しめる。土日を中心に、週4日程度運航中。真冬には、屋根と暖房付きの船(70分2500円、小学生1500円)がうれしい。詳細はホームページで確認。問い合わせは東京湾クルージング(03・5679・7311)。

 麒麟像から徒歩3分。有便堂(TEL3241・6504)は、横山大観や川合玉堂ら日本画の巨匠も通った書画専門店。画材だけでなく、上質な和紙を使った小物もそろう。日本橋のイラストをあしらった便せんと封筒、はがきは、セット販売も(写真、1339円)。

(2018年2月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)