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光の水滴 
勅使川原三郎作(大分県豊後高田市)

湖面に輝く光 映し出す

【写真1】滴が二重に見えるガラス=桐本マチコ撮影
【写真1】滴が二重に見えるガラス=桐本マチコ撮影
【写真1】滴が二重に見えるガラス=桐本マチコ撮影 【写真2】「月の木」は高さ6メートル、直径約16センチ。ガラスの破片に当たった日の光が湖面に反射することも=桐本マチコ撮影

 海に丸く突き出た大分県・国東(くにさき)半島。その中央に奇岩秀峰がそびえる並石(なめし)ダムグリーンランドがある。湖畔の遊歩道を歩くと、透き通ったガラスのオブジェが現れた。

 2014年、「国東半島芸術祭」の作品としてダンサーで造形作家の勅使川原三郎さん(64)が制作した2点の一つ。高さ2メートル前後。直径12センチのクリスタルの滴=写真1=は、光を透過し、湖面や木々を静かに映し込む。

 芸術祭では、国東半島の海岸線や山間部などに作品を設置し、鑑賞しながら各地の歴史や自然に触れてもらうプロジェクトを展開。並石ダムは、水の恵みをもたらす象徴として作品の舞台に選ばれた。ここを訪れた勅使川原さんは「夕日が沈むと山の端から月が現れ、冷たい光が私の目に突き刺さった」という。その強烈な体験を両作品に反映した。もう一つの作品「月の木」=写真2=は、湖の対岸にある。太陽や月の光が湖面に輝く瞬間をガラスの破片240枚で表現。ガラスの破片は、勅使川原さんが以前からダンスの舞台美術として使用している。観光客が少なかったダムに、開催時は国内外から約1万1千人が訪れた。

 春になると、桜が湖面に鏡映しになる。地元で地域おこしに取り組む中野幸輔さん(70)は、「満開の桜に作品が溶け込む姿は、本当に美しい」とほほ笑んだ。

(石井広子)

 並石ダムグリーンランド

 1986年に完成した、豊後高田市内を流れる桂川水系の並石ダム。そのダム湖を囲む景勝地で、かつてあったししおどしの「こっとん」という音にちなみ、「こっとん村」ともいわれる。湖畔の遊歩道は約40分で散策できる。背景には、国東半島独特の奇岩が連なり、岩の真ん中に大きな穴があいた鬼城岩峰(きしろがんぽう)がそびえる。約600本ある桜の名所としても知られ、4月1日には「桜まつり」を開催。

 《アクセス》宇佐駅から車で約30分。


ぶらり発見

鴨南蛮そば

 並石ダムグリーンランド内にある里の駅こっとん村(TEL0978・27・3045)は、食堂兼特産品の直売所。豊後高田市の手打ちそば認定店で、特産のアイガモ、そば粉を使った鴨南蛮そば(写真、900円)が味わえる。地元の女性たちが手作りするこっとん村饅頭(まんじゅう、350円)も人気だ。

 里の駅から車で15分の長安寺は、天台宗の古刹(こさつ)。神仏習合の山岳宗教文化を伝える寺院群「六郷満山」の一つ。今年で開山1300年を迎える。5月上旬には境内のシャクナゲが見ごろに。

(2018年3月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)