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家族 
重岡建治作(静岡県伊東市)

触れてつながる博愛の心

休日には多くの人が訪れる=横関一浩撮影
休日には多くの人が訪れる=横関一浩撮影
休日には多くの人が訪れる=横関一浩撮影 日暮れ時、街灯のあかりに照らされる「つながる」(3秒間露光)=横関一浩撮影

 伊東駅からなぎさ公園へ。潮の香りが漂う市街地を抜けると、その先に天色(あまいろ)の空と群青の海が広がった。海沿いの公園にたどり着くと、まるで野外彫刻美術館のようなブロンズの彫刻群が姿を現した。

 波打つ形の台座に設けられた本作は、腕を広げて天を仰ぐ父と寄り添う母子。空を舞う鳥たちは、この親子を見守っているかのようだ。

 作者は伊東市にアトリエを構え、主に人物をモチーフにしたブロンズや木彫のモニュメントを手がける彫刻家の重岡建治さん(81)。幼少期を旧満州(中国東北部)で過ごし、孤児院を営んでいた父親が、現地の子どもたちにも分け隔てなく愛情を注ぐ姿に、強く影響を受けた。本作には家族の愛や絆、平和への願いを込めたという。「台座部分と作品を直接つなげることで、『大地より生まれる』コンセプトを表しました」と重岡さん。

 同市の市制30周年記念事業の一環で1977年に「家族」を設置して以降も、重岡さんの申し出で徐々に作品を増設。今では園内に19体を数える。全て触ることができ、なかには遊具のように動かしたり、ベンチのように座ったりできるものも。「触れてもらうことで作品に込めた願いがつながるように思う。艶(つや)も出てメンテナンスにもいいんですよ」と重岡さんは笑う。

(尾島武子)

 なぎさ公園

 伊東市の市制30周年記念事業で1977年に落成した。市の中心市街地を流れる伊東大川(通称松川)の河口にあり、相模灘に面する。好天時には初島、真鶴岬や三浦半島、房総半島が一望できる。90年から始めた再整備を経て、約3千平方メートルの敷地内には「家族」など、重岡さんのモニュメントが立ち並ぶ。ベンチとして利用できる「ゆうなぎ」、手のひらの上に取り付けた鳥が風を受けて回る「祈る」も。

 《アクセス》伊東駅から徒歩15分ほど。


ぶらり発見

クッキーシュー

 なぎさ公園から徒歩3分の按針(あんじん)メモリアルパークは、江戸初期に、伊東で日本初の洋式帆船を建造した英国人ウィリアム・アダムス(三浦按針)の功績をたたえた記念公園。毎年8月10日に、式典や花火大会を開催。問い合わせは伊東市観光課(0557・32・1716)。

 食事や買い物、足湯などが楽しめる道の駅伊東マリンタウン(TEL38・3811)は伊東駅から徒歩15分ほど。お土産に、手づくりクッキー工房べるじゅ(午前9時~午後6時)のクッキーシュー(写真はプレーン味、80円~)はいかが?

(2018年4月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)