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龍舟 
蔡國強(ツァイグォチャン)作(福岡市博多区)

劇場の夜を彩る赤い竜

明かりがついた「龍舟」=滝沢美穂子撮影
明かりがついた「龍舟」=滝沢美穂子撮影
明かりがついた「龍舟」=滝沢美穂子撮影 韓国の作家、鄭廣鎬(チョン・クワンホー)の「千字橋」。漢字習得のための四文字熟語がモチーフで、同施設内にある=滝沢美穂子撮影

 夕暮れ時の中洲川端。博多座入り口の巨大な吹き抜けに真っ赤な竜が現れた。舟をイメージした作品のオール部分には99個の赤い提灯(ちょうちん)がともる。せわしなく行き交う人々の上空を、竜は悠々と飛んでいるかのようだ。

 1999年、文化複合型施設「博多リバレイン」の完成時に、アジアの人々と文化が集う庭「アジアガーデン」をコンセプトに作られたアートのひとつ。「中国で竜は風水学における運気や、無限の力を表すシンボル。舟はアジアと福岡の交易を表します。中国の祝祭用の提灯が劇場のノスタルジックな空間に誘います」と作者の蔡國強さん(60)は語る。

 蔡さんはニューヨーク在住で、国際的に活動する中国人アーティスト。火薬や花火を使ったイベントやインスタレーション(空間芸術)などを得意とし、2008年の北京オリンピックの開会式・閉会式で、視覚・特殊効果監督を務めた。1986年から95年まで日本に滞在、日本とのなじみも深い。

 舟は、博多座での歌舞伎公演時、歌舞伎役者が博多川から船に乗って登場する「船乗り込み」を思い起こさせる。博多座営業部の吉丸惣一郎さん(43)は、「船乗り込みは初夏の博多の風物詩。龍舟も夜は一段と華やかで劇場の顔的な存在です」と語る。今年は高麗屋の襲名披露興行で4月30日に船乗り込みがある。

(清水真穂実)

 博多リバレイン

 商店街の再開発として生まれ、博多座や福岡アジア美術館、ホテルなどが入る。2014年のリニューアルで、一部のアートは移転や撤去を行い、当初の15点のうち8点が残る。同美術館のあるセンタービル7階には、アジアの美術や文化に関する本、国内の美術展図録など約1万冊が並ぶ「アートカフェ」が先月誕生。1階には、中国の人気アーティスト・卜樺(ブーホア)による縦4×横11メートルの壁画が新たに登場した。

 《アクセス》地下鉄空港線中洲川端駅から直結。


ぶらり発見

ミンチカツレツ

 中洲川端駅から徒歩7分。自家焙煎珈琲(ばいせんコーヒー)と手作り洋食の店ブラジレイロ(TEL092・271・0021)は、昭和9年創業の老舗。ラグビーボール型の「ミンチカツレツ」(写真、990円)が人気。デミサイズコーヒー、サラダ付きで限定15食、予約もできる。午前10時~午後8時((土)は7時まで)。(日)(祝)休み。

 同駅から徒歩8分、明治・大正の博多の文化に触れられる「博多町家」ふるさと館(TEL281・7761)では、博多織や博多人形、博多独楽(こま)づくりなどを実演、体験もできる。午前10時~午後6時。

(2018年5月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)