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The Unique of Human 
冨永ボンド作(佐賀県多久市)

カラフル壁画で街おこし

絵の前で長女と遊ぶ冨永ボンドさん=滝沢美穂子撮影
絵の前で長女と遊ぶ冨永ボンドさん=滝沢美穂子撮影
絵の前で長女と遊ぶ冨永ボンドさん=滝沢美穂子撮影 ジャズが好きなマスターが依頼したウォールアート第1号。Barばらーどの壁に早川康司が描いた=滝沢美穂子撮影

 白壁に広がるカラフルな壁画を若い男女が眺めている。佐賀県多久市にあるアートスタジオ兼バー「ボンドバ」の外壁だ。描かれた無数の人々を縁取るのは、黒いボンド。ライブペインターで店長の冨永ボンドさん(35)は、「人の動作やつながりを視覚化しました」と話す。

 ボンドさんが福岡県から同市に引っ越したのは、2014年のこと。かつて炭鉱の町として栄えた多久は、1972年の閉山とともに人口が減り、シャッター商店街や老朽化した建物が目についた。街おこしに取り組む地元の人々から誘われ、思いついたのが、シャッターや壁に絵を描く「ウォールアートプロジェクト」だった。ボンドさんの作品を見に県外からファンが訪れたのがきっかけだ。「多様な作家のアートで町を彩れば、ファンが見に来てくれるのではと思いました」

 15年、知り合いの作家たちに声をかけ、居酒屋、旅館、民家などの壁に描き始めた。モチーフは、風景、亀、花、サッカー選手など様々。家主の商売や趣味などをリサーチし、作風の合う作家をマッチングする。最初は、奇抜なアートができると懸念した人もいたが、27人により描かれた絵は、24件にのぼった。富亀和(ときわ)旅館を営む富永邦久さん(70)は、名前にちなんだ亀を描いてもらった。「多久に新しい動きが出てきてワクワクするね」

(佐藤直子)

 多久市

 1954年、1町4村の合併により誕生。炭鉱の町として栄え、60年ごろには、人口も4万5千人にのぼった。

 閉山後は人口が減り、現在は約2万人。市内に住む約50人の有志で構成するまちづくり協議会など、市民主導で、多久駅周辺の活性化を積極的に行う。駅に隣接する市まちづくり交流センター「あいぱれっと」では、約60人の作家によるアートイベントを毎年5月に行っている。

 《作品へのアクセス》多久駅から徒歩約10分。


ぶらり発見

花ごよみご膳

 アートスタジオ「ボンドバ」(TEL0952・37・8646)では、作品展示やデザインした小物を販売している。毎月第4(日)午前11時~午後6時、ボンドで絵を描く体験ができるほか、毎週(金)午後8時~翌午前3時、バーの営業を行う。

 駅から車で約10分の自然食レストラン花ごよみ(TEL37・5288)では、玄界灘で取れた旬の魚や佐賀牛などを。「花ごよみご膳」(写真、2160円)など4種。有田焼などの器に盛られている。午前11時~午後3時(ラストオーダーは30分前)。(火)休み。

(2018年8月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)