長崎・五島列島の福江島。空港から島随一の絶景地・大瀬崎灯台へと、玉之浦湾の入り江を見下ろす山あいの道を車で向かう。ふいに木々が途切れた場所で眼下を見やると、不思議な風景が目に飛び込んできた。
蓮(はす)の花咲き、鯉(こい)が泳ぐ、青々とした巨大な池――。実は五島市玉之浦町の特別養護老人ホーム「ゆうゆうの里」の屋上に描かれた絵画である。
作者はオーストラリア出身の3Dアーティスト、ルーディ・キスラーさん(42)。施設長の門原淳一さん(47)が、少子高齢化で人口減が進む地区の活性化のため、クラウドファンディングで資金を募って制作を依頼した。昨年9月にキスラーさんが来訪し、10日間かけて職員やボランティアと共に完成させた。
絵は、1・3キロ先の山の中腹の1地点からだけ立体的に見えるように描かれている。制作時は、山から目視できるようにロープで輪郭を取り、車で10分ほどの山と屋上を往復して見え方を調整した。「玉之浦の豊かな自然と調和する作品になった」とキスラーさんは胸を張る。施設利用者にも好評で、職員と共に鑑賞した浜本ナツエさん(91)は「きれーかねー、ってびっくりした」と興奮を伝える。
鑑賞地点には案内看板が無いため、知らずに通り過ぎる人もいる。ひっそりと水をたたえる「秘密の池」を、宝探し気分で探してみては。
(安達麻里子)
玉之浦地区 大小約140の島が連なる五島列島で最大の福江島。その南西端に位置する地区。大正時代に遠洋漁業の寄港地として栄え、現在は定置網やマグロの養殖業が盛ん。最盛期に1万人を超えた人口は現在1300人まで減り、高齢化率は50%を超える。五島各地でキリシタン迫害があった明治初期、迫害を逃れた数少ない地区で、日本最古とされるルルド(聖母誕生の地を模した洞窟)がある井持浦教会が立つ。 《アクセス》福江港、福江空港からいずれも車で50分。 |
東シナ海に面した断崖に立つ大瀬崎灯台は福江港から車で60分。「日本の灯台50選」の一つで、映画「悪人」のロケ地にもなった。360度の絶景は迫力満点だ。問い合わせは五島市玉之浦支所(0959・87・2211)。
「ゆうゆうの里」から徒歩10分のレストラン、NEWパンドラ(TEL87・2566)は、地元産のウツボを使ったメニューを並べる。から揚げやみそ汁=写真=のほか、湯引きや天ぷらなど充実のラインナップ(300円~900円)。午前10時~午後3時、5時半~8時。(月)の夜休み。