六本木駅から東京ミッドタウンへ。地下通路を進むと、天窓から降り注ぐ太陽光に照らされる大きな石が見えてきた。
2007年、元防衛庁跡地に開業した複合施設、東京ミッドタウン。敷地内に、国内外の作家が日本庭園を作り上げる「ハイブリッド・ガーデン」をコンセプトに、アートを配置した。メイン作品の一つが高さ約1・8メートルの白大理石の彫刻「意心帰」だ。通行人が行き交うプラザ地下1階に、地球の一部である大理石を地中に戻すイメージで置いた。アートディレクターの清水敏男さん(65)は「人々が集い、石と出会い、街へと散っていく。新しい街の出会いの象徴として、優しいフォルムのこの作品が不可欠だった」と語る。
ソラマメのような丸みのあるフォルム。通りすがりの子どもたちが触れ、中央部の空洞に入って遊ぶ。作者で彫刻家の安田侃さん(73)は「母体の胎内をイメージしました。中に入ると、厚い石の層に守られる安心感を感じるのです」と話す。店舗、オフィス、ホテル、病院……。連日約8万人の人々が訪れる。「楽しいだけではなく、寂しい、悲しい気持ちの人も通る。それぞれの気持ちに寄り添う、人生の伴走者のような存在になってくれれば」と安田さん。
記者も中に入ってみた。全身が包まれ、心が落ち着く。胎児も同じような安らぎを感じているのだろうと思った。
(下島智子)
東京ミッドタウン 2007年3月、港区赤坂9丁目の元防衛庁跡地約6万8900平方メートルを再開発し、誕生した。約130の店舗、美術館、オフィス、公園などを有する。 清水敏男と、キュレーターのジャン=ユベール・マルタンがアートワークを手がけ、国内外の14作家19作品を設置。「ガレリア」、「プラザ」など人が集まるエリアは「光の庭園」、安らぎを与えるガーデンなどは「月の庭園」をイメージした作品が並ぶ。 《アクセス》六本木駅直結。 |
11月13日からの「ミッドタウン クリスマス」(12月25日まで、TEL03・3475・3100)では、約2千平方メートルの芝生広場が宇宙をテーマに彩られる「スターライトガーデン」(午後5時~11時)など、館内外が華やかに装飾される。北欧やドイツのクリスマス雑貨の販売や、期間限定ショップも。
ガレリア地下1階のザ・カウンター(TEL5413・6171)では、具材が選べる「カスタムバーガー」(写真、1393円~)が人気。組み合わせは100万通り以上。自分だけのハンバーガーが味わえる。午前11時~午後11時。