地面からのっそりとはい出した巨大なゴリラに、子どもが群がる。鼻をよじ登り、背中を滑り降り、楽しそうだ。秋田県井川町の日本国花苑にある彫刻「井川ゴリ山」。公園内に点在する彫刻の中でもとびきりのインパクトで、大人たちも散歩の足を止める。年配の女性はまじまじと見つめてポツリ。「私の顔と似ておるね」
町が2000年から09年に開催した「桜の森彫刻コンクール」の03年優秀賞作。応募206点から選ばれた。当時、町職員として担当を務めた幡宮正光さん(69)は、「コンクールのコンセプトは苑の空間にマッチしたアート」と話す。
作者は、鍛金彫刻家の安藤泉さん(69)。総面積40ヘクタールで緑豊かな日本国花苑は「空が広く、地球という天体を実感する場所」という。「大自然の代表者としてゴリラをどんと置くことで、自然と人間の橋渡しにしたかった」。ゴリ山は、高さ3・2メートル。厚さ2ミリの銅板160枚を、半年以上ひたすら金づちで成形し、子どもが登って遊ぶことを前提に内側からステンレス材で補強。手や足をかけられるように凹凸を意識し、想像を膨らませてもらおうと頭や手など体の一部のみを表現した。
町総務課の湊和樹さん(45)は「井川のシンボル」と笑顔。町内の施設にも昨年、3分の1サイズのゴリ山が作られた。安藤さんが願った通り、今日も多くの友達に囲まれている。
(中村さやか)
日本国花苑 桜の名所として知られ、200種2千本が井川町の春を彩る。苑内には「桜の森彫刻コンクール」の歴代の受賞作40点が。ゴリ山はチビッコ広場に設置。 《アクセス》 井川さくら駅から車で5分ほど。 |
日本国花苑前にある給油店の佐々木商事(問い合わせは018・855・6170)は、「油も売ってるアイスやさん」として自社で製品化したアイスクリーム(写真、コーン250円、カップ300円)を販売。苑内の八重桜を練り込んだ「花びら味」を始め、地元のメロンなどを使った季節の味が楽しめる。
苑の入り口脇にあるじまんこハウス(問い合わせは874・4178)は、そば屋を兼ねた産直店。地元産の手打ちそば、そばソフトクリームを提供し、野菜や花苗も売る。