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Carp is Dragon in heaven
 木村英輝作(京都市中京区)

地下街を泳ぐコイの大群

コイは全部で108匹。煩悩の数と同じ=楠本涼撮
コイは全部で108匹。煩悩の数と同じ=楠本涼撮

 全長約14メートルの壁に色鮮やかに描かれたコイの大群。我先にと折り重なるように上を目指している。

 作品があるのは、京都市役所前駅直結の地下街「ゼスト御池」。改札口から西へまっすぐ歩いた先の寺町広場に置かれている。現在の地下街は、スーパーや薬局などが並び、地元の人でにぎわいを見せているが、以前は洋装店が中心で、人影もまばらだった。壁画は、そんな業績低迷を打開するリニューアルプランの一つとして、2008年に設置された。

 作者は、京都市在住の壁画絵師、木村英輝さん(77)。急流をさかのぼったコイは竜になる、という中国の故事「登竜門」から着想を得た。水の中をイメージし、映り込みの少ないアクリルミラーを使用。アクリルガッシュで躍動感たっぷりに描いた。「辰巳(東南)の方角に向かって勢いよく上昇するイメージ」と木村さん。作品制作時は常に縁起の良いモチーフや方角を意識しているという。

 地下街には、計四つの広場があり、内三つを市民に貸し出している。今では年間390件ほどのイベントが催される人気の場所だ。作品を管理する京都御池地下街の土岐和則さん(46)は、「月1でライブをする方も多いです。ここから巣立って、成功して欲しいですね」と話す。広場を利用するシンガー・ソングライターの明香音さん(29)は、「コイが未来に向かっている感じ。私もがんばろうって思えます」と目を輝かせた。

(町田あさ美)

 ゼスト御池

 スーパーや飲食店など38店舗が軒を連ねる。アート作品は他に、「おぼこ」と「いけず」の二体の地蔵「おぼこいけず地蔵」(城たいが・作)がある。 


ぶらり発見

そば寿し 作品から徒歩約10分の本家尾張屋本店(問い合わせは075・231・3446)は、1465年創業の老舗菓子・そば店。名物の「そば寿し」(写真、1188円)は、ゆでたそばにしいたけや卵、三つ葉をのせてのりで巻いた。午前11時~午後6時(菓子販売は午前9時~午後7時)。

 ゼスト御池から徒歩約20分、真言宗寺院で国史跡の神泉苑(問い合わせは821・1466)には、コイが泳ぐ池や美しい庭園が広がる。朱色が目をひく法成橋は、願いを念じながら渡ると成就するといわれている。

(2019年6月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)