津軽平野の中東部・青森市浪岡地域はリンゴの町だ。生産量全国3位の同市の実に95%が浪岡産。山に囲まれ、昼夜の寒暖差の大きい気候がおいしいリンゴを育てるという。そんな土地柄を象徴するアートが浪岡駅前にある。高さ4メートルのスチール製。大小様々なリンゴの枠組みがいくつも重なり、組み上げられている。
2010年、同駅の改築に伴い、合築の交流施設あぴねすが誕生。市内の看板会社エーアイサインが広場を彩る作品制作を担当し、同社代表取締役で絵画や立体作品の作家でもある石澤暁夫さん(57)が指揮を執った。「リンゴをハートでくりぬくことで人々の思いを込めました」と話す。
パーツは全て同じ形だが、厚さとサイズを変え、角度を調整して溶接。どの角度から見ても、異なるフォルムが楽しめるようにした。10分の1の模型は作っていたが、いざ原寸で制作するとイメージとずれが生じたため、一時中断。ベニヤ合板で原寸大模型を作り、角度などを緻密に測定。それを見ながら制作し直した。
色は、ふじやつがるなどのリンゴを参考に、赤に黒を混ぜ、半ツヤにしてしっとりと仕上げた。看板制作のノウハウが生きたという。「街中にアートが点在するニューヨークにも置くことが夢」と石澤さん。
帰り際、あぴねすのリンゴ園で採れたばかりのふじをいただいた。蜜入りのリンゴはみずみずしく、甘酸っぱい味がした。
(下島智子、写真も)
青森市浪岡交流センターあぴねす 2010年開館。多目的ホールや展示コーナー、雪室(2~9月ごろ)などの低温熟成施設、りんご園地、多目的広場を有する。 |
浪岡駅から車で5分、道の駅なみおかアップルヒル(問い合わせは0172・62・1170)には、リンゴ園が広がる。自家製スイーツ15種ほどの中でも、県産リンゴをふんだんに使ったアップルパイ(写真、216円)が人気だ。
駅から車で10分弱、室町時代に浪岡を支配した北畠氏の居城跡・浪岡城跡が広がる。中世の館(問い合わせは62・1020)では同城跡の出土品など約200点を展示。浪岡の歴史をたどることができる。観覧料210円ほか。原則(月)と第3(日)休み。