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光屏風(紅)
吉岡幸雄(さちお)作(千葉県成田市)

古代の色でおもてなし

縦180×横90センチが10曲。紅の部分は、紅花で染めた和紙が1曲に4枚、計40枚が使われた=郭允撮影 
縦180×横90センチが10曲。紅の部分は、紅花で染めた和紙が1曲に4枚、計40枚が使われた=郭允撮影 

 手荷物を持った乗客が次々とやって来た。成田空港第2ターミナルビル。外国人や、帰国した日本人が機内から降り立ち、初めて眺める空間に「光屏風」はある。日本の伝統工芸品が並ぶ約500メートルの到着コンコースの両端に、「藍」と「紅」の屏風が2隻飾られている。

 作者は9月に急逝した染織史家の吉岡幸雄さん(1946~2019)。江戸後期から続く京都の「染司よしおか」5代目で、植物染めの研究者として、古代の色の再現に取り組む。奈良・東大寺の修二会や、薬師寺の花会式に用いる造り花の染め和紙などを長年奉納。日本文化に詳しいことから2008年、日本の玄関となる到着コンコース全体を企画・監修した。

 自身の作品に屏風を選んだのは、屏風が間仕切りになり、美の空間がすぐにできる優れものだからという。島根県斐伊川の工房で作られた上質な手すき和紙を用い、染料には三重県伊賀上野などの紅花を使用。刷毛で引いて染めては乾かし、下の濃い色の2段は8回、その上の2段は6回染め重ねた。

 植物染めにこだわるのは、「まず色が美しいから」。「染屋の基本は衣食住に関わり、いかに自然と仲良くしていくか。自然に対する感謝の気持ちが大事」と語っていた。実は、吉岡さんにお会いした昨年3月は、屏風が破損しており、修復なったこの春再び設置された。吉岡さんの作ったおもてなしの空間は、今日も世界の人々を出迎えている。

(清水真穂実)

 成田空港第2ターミナルビル

 日本の手わざ 成田空港第2ターミナルビル サテライト到着コンコース アートワーク 通路の壁面には、漆、瓦、蒔絵、磁器など生活に関わる伝統的な工芸品が並ぶ。


ぶらり発見

「黒平まんじゅう」 JRの空港第2ビル駅から電車で8分、黒平まんじゅう本舗 JR成田駅前支店(問い合わせは0476・24・0231)では、セイロで蒸しあげた「黒平まんじゅう」(写真、1個98円)が人気。11月限定の「みそまんじゅう」も。

 成田空港からバスで10分弱、航空科学博物館(問い合わせは0479・78・0557)は本格的なシミュレーターが体験できるほか、展望台からは航空機の離着陸が間近に見られる。午前10時~午後5時。入館料700円ほか。(月)((祝)の場合は翌日)休み。

(2019年11月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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