かつてはライブハウスに集まるミュージシャンや若者らでにぎわい、今ではおしゃれな古着店が人気を呼ぶ東京・高円寺。街中を歩くと目につくのが、ビルの外壁や歩道脇で見られる壁画だ。10年来この地で暮らすアートディレクターの大黒健嗣さん(36)らが手がける「Koenji Mural City Project」によるもので、街にゆかりのあるアーティストへ制作の場を提供するアートプロジェクトの一環だという。
JR高円寺駅南口から徒歩5分。「桃園川緑道」と呼ばれる小道の壁に描かれた本作もその一つで、大黒さんは「商店街を含めた3者の求めたものが融合した作品」と語る。
カラフルな装飾を施した青毛の馬、宇宙飛行士のようないでたちをしたカッパの親子、草花やイルカなどが37メートルほどの壁画に姿を現す。作者は絵を描きながらメキシコやグアテマラを旅した経験があり、帰国後は壁画制作を中心に活動するアーティストの岩切章悟さん(41)だ。壁の落書きの除去とともに街の美観向上を進める杉並区の依頼にこたえ、2018年3月末に描き上げた。スペイン語で「楽園の川」を意味する本作は「循環」というコンセプトのもと、暗渠(あんきょ)となった桃園川の昔の流れをイメージしたという。「陽光や雨、種子が大地に降り注いで新しい命が芽生えるさまを表現した」と岩切さん。
大黒さんらがまいた種は、着々と花を咲かせているようだ。
(尾島武子、写真も)
Koenji Mural City Project 2016年の立ち上げ以降、駐車場の塀などに7点の壁画(ミューラル)を制作した。現在、5点が見られる。 |
作品から徒歩2分のGallery Cafe 3(問い合わせは03・3313・3688)で1月11日(土)~26日(日)、人見将展「今、私を肯定するために」を開催。午後3時~10時(1月26日は8時まで)。(月)休み。
私語厳禁の喫茶店・アール座読書館(問い合わせは3312・7941)も作品から徒歩2分。ネルドリップでいれたコーヒー(写真はブラジル・ブルボン、680円)とブラウニー(220円)を読書のお供に。午後1時半~10時半[(土)(日)(祝)(休)は正午から。ラストオーダーは30分前]。(月)[(祝)(休)の場合は翌日]、12月31日~1月5日休み。