富山市民の足、路面電車。その富山駅停留場で、鮮やかに光を放つ壁面に目を奪われた。色とりどりのガラスが木漏れ日や海のように輝き、モネの絵画のようだ。
2015年3月の北陸新幹線開通に伴って駅周辺を整備し、工芸ガラスを用いたパブリックアートを配置。本作はその一つで、工業ガラスに2・5センチ幅の様々な長さの工芸ガラスを重ね、アルミを用いた特殊フレームで固定。裏面からLEDライトで照らしている。空間デザインとコーディネートを担当した都市設計家の小野寺康さん(57)は「立山連峰と富山湾。豊かな自然を、富山の高い技術力で表現しました」と話す。
薬売りでその名をはせた同市。明治・大正期には、薬瓶を製造するガラス工場が並んでいたという。瓶は太平洋戦争後にプラスチックへと移り変わったが、1985年4月の市民大学ガラス工芸コース開設を機に、「ガラスの街とやま」を掲げた街づくりを開始。作家の育成や産業化に取り組んできた。
工芸ガラス部分を手がけた作家の名田谷隆平さん(55)も、ガラス工芸コースで学んだ一人だ。複数色のガラスを何層にも重ねて表情を出し、表面には切り子を施した。手斧で削った木材の温かな質感から着想を得たという。手作業で作り上げたパーツの数は5万超。「手作りのぬくもりと、情熱を感じてもらえたら」と名田谷さんは目を細めた。
(下島智子、写真も)
ガラスの街とやま 市が取り組むガラスがテーマの街づくり。現代ガラスアートを展示する市ガラス美術館や、市内各所に配置したショーケースなどでガラス文化を発信。 |
富山駅併設「きときと市場 とやマルシェ」内の廻る富山湾 すし玉 富山駅店(問い合わせは0120・558127)は、1日2回仕入れる新鮮なネタが自慢。白エビ、ホタルイカ、カニばらみののった富山湾盛り(写真、550円)は近海の幸が満喫できる。午前11時~午後9時半。
本作の工芸ガラスを制作した富山ガラス工房(問い合わせは076・436・2600)は駅から車で約20分。富山ゆかりの作家らの作品展示や販売、工房見学、吹きガラス体験(有料)なども。午前9時~午後5時。