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アートリップ

スペース・アイ
多田美波作(神戸市中央区)

ゆがむ景色に 「いいね!」

  • 高さは2メートルを超える。足元は、葉ボタンなど季節ごとの花が彩りを添える

 その穴は、公園脇の歩道に浮かんでいた。背丈よりも高い透明なアクリル板に開いた丸い穴。周囲のドーナツ状の部分が内側にカーブを描いて削られ、板越しの景色が、ぐわんとゆがむ。通行人がアクリル板にさしかかると、ドーナツ部分でその姿が反転し、一瞬消える。次の瞬間、再び穴から実像が現れる。目の前の人が一瞬異次元へ吸い込まれ、戻ってきたような感覚だ。

 「スペース・アイ」は1981年、神戸市の公園「東遊園地」のフラワーロードにやってきた。生みの親は彫刻家の多田美波(1924~2014)。ステンレスやアクリルを使い、周りの景観を取り込んで見せる野外彫刻などで知られる。作品は長く市民に愛されてきたが、紫外線によるひび割れや落書きなどで、次第に周囲を映し込む透明性が失われた。2015年のビエンナーレ開催を機に一から作り直すことになった。図面と著作権を所有する多田美波研究所は、国内外の水族館にある巨大水槽などを手がける香川県の日プラに相談。透明な輝きを持った「スペース・アイ」が完成した。特殊な技術でコーティングし、長期の紫外線にも耐えうるという。「作り替えには迷いもあったが、これなら多田も喜んでくれる」と同研究所の岩本八千代所長。

 ゆがむ景色は今も、SNSに画像投稿され話題だ。「神秘的」「加工写真じゃないよ」……。コメントとともに「いいね!」を集めている。

(井上優子、写真も)


 《アクセス》三ノ宮駅から徒歩10分。

 多田美波

 全国に野外彫刻作品が残るほか、帝国ホテル・メインロビーにあるガラスの壁画「黎明(れいめい)」、大阪のリーガロイヤルホテル・メインラウンジの照明「瑞雲(ずいうん)」なども。


ぶらり発見

 毎年1月17日に「阪神淡路大震災1・17のつどい」が行われる東遊園地。1~3月の(土)(3月28日を除く)午前10時~午後1時、神戸市内の農家が対面販売するファーマーズマーケットを開催する。

神戸下町サンド 公園隣の市庁舎1階には、神戸・萩原珈琲(コーヒー)店127番地(問い合わせは078・322・0127)がある。牛すじとこんにゃくを煮込んだ同市長田区名物の「ぼっかけ」をはさんだ「神戸下町サンド」(写真、400円)は、人気の地産地消メニューだ。午前8時15分~午後6時((土)(日)(祝)は10時から)。2月9日休み。

(2020年1月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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