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ルーフアート
余田(よでん)卓也 作 (大阪市福島区) 

車窓に現れる「謎の暗号」

作品は帆布を1文字ずつカットし、屋根に貼り付けている=MIKIKO撮影
作品は帆布を1文字ずつカットし、屋根に貼り付けている=MIKIKO撮影

 大阪市内を一周するJR大阪環状線外回りの電車が福島駅に向けて減速すると、車窓に一瞬何かが現れた。ビルにはさまれた屋根に浮かび上がるのは、黒と白のアルファベットや数字の重なりだ。駅を利用する人からは「なんやろな?と気になっていた」という声も聞いた。実はこれ、電車から見える屋根を表現の場とする創作活動「ルーフアート」の一つなのだ。

 この活動は、堺市在住のアーティスト、余田卓也さん(46)が学生だった1994年に始めた。殺風景な都市の町並みにアートが見えたら面白いのではないか、と考えたのだ。無料で屋根を使わせてほしいという頼みを最初に受けてくれたのが、ユニホームを扱う「草住商店」代表の草住勝康さん(64)だった。学生の頃、梅田のライブハウスで音楽に熱狂した草住さん。「『何か世間を動かしたろかい』という若いのが、発表の場がないと困っとる。そういうヤツにはチャンスをやらんと」と話す。

 その後協力者は増え、97年以降は家主が考えたメッセージを暗号化した。「場所を借りる以外の関わりがほしかった。見た人に屋根の下の人の思いを連想してほしい」と余田さん。昨年末、同店に9年ぶりに設置した新作は、正方形の枠に14文字が躍るQRコード風の「K-word」シリーズ。文字をパソコンのキーボードにかな入力モードで打ち込み、並べ替えると「きらくに・すなおに・そっちょくに」となる。草住家のモットーだ。

(井上優子)

 ルーフアート

 「K-word」シリーズは、桜ノ宮―京橋駅間にも旧作が残る。過去には、数字4桁で示す「家庭のパスワード」シリーズを大阪環状線沿線の7軒で展開。


ぶらり発見

アートリップ 作品から徒歩5分のパン屋、パネ・ポルチーニ(問い合わせは06・6451・8001)は営業時間が午前10時~午後11時半((金)(土)は翌午前0時まで)で仕事や宴会帰りにも焼きたてが食べられる。人気の塩フォカッチャ(写真、232円)ほか、クリームパンやハード系のパンなど種類が豊富。(日)休みのほか不定休。

 同店から徒歩3分の福島天満宮(6451・5907)。旧地名の「鹿飢(がき)島」が「餓鬼」に音が通じると菅原道真が案じたことから、「福島」に改められたという伝説が残る。

(2020年2月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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