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Cycloid V(ファイブ)
森万里子作(東京都港区)

曲線が描く宇宙のサイクル

ロンドンやニューヨークなどの国際的なチームと制作。七つのパーツを組み合わせた
ロンドンやニューヨークなどの国際的なチームと制作。七つのパーツを組み合わせた

 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。

 ここは、ビジネスマンが行き交う東京・虎ノ門ヒルズ。高さ3・7メートルほどの「メビウスの輪」のような構造物は、1月に竣工したばかりのビジネスタワー1階ロビーに立っていた。

 2018年に作品を制作したのは、国内外で活動する美術家・森万里子さん。タイトルの「サイクロイド」は、円周上の一点が回転しながら描く軌跡を指す言葉だ。無限ループするようなその構造に、誕生、死、再生を繰り返す宇宙のサイクルや輪廻転生などの考え方を投影している。素材はステンレス。光をイメージして、真珠のように輝く塗装を施した。「ここで過ごす人々に、ポジティブなエネルギーを与える存在になればうれしく思う」と森さんは語る。

 同タワーのロビーは、金属や石材など無機質な素材が使われている。その一方で、滝を模したオブジェを設置したり、樹木を植えたりと、自然を取り入れた場づくりも重視する。作品の設置に携わった森美術館の高橋美奈さんは「作品の世界観と、場との親和性が高いのではと考えた」と話す。

 仕事で訪れていた伊藤政人さん(53)は、「影が柔らかく、室内ではないみたい。屋外との連続性を感じます」と作品を見上げた。

(高木彩情)

 虎ノ門ヒルズ

 2014年開業の森タワーを皮切りに開発が進む。敷地内にアジアを中心とした現代作家の作品を多数設置する。日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」が6月開業。


ぶらり発見

アートリップ ビジネスタワー隣の老舗そば屋、虎ノ門大坂屋 砂場(問い合わせは03・3501・9661)の店舗は、1923年築の登録有形文化財。「桜えび天せいろ」(写真、1530円)はサクサクのかき揚げが好評だ。

 虎ノ門駅から徒歩6分、コミュニティースペース新虎ヴィレッジでは、3月19日までの平日午前11時~午後2時にキッチンカーが日替わりでローストポークや沖縄料理などを提供する。問い合わせはフォルクスワーゲンカスタマーセンター(0120・993199)。

(2020年2月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)