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金原瑞人さん
「古見屋羊羹」の高瀬舟羊羹

「古見屋羊羹」の高瀬舟羊羹
「古見屋羊羹」の高瀬舟羊羹
「古見屋羊羹」の高瀬舟羊羹 金原瑞人さん

 出身の岡山の銘菓なので、小さい頃からそばにあったのですが、特別意識することもありませんでした。初めて意識したのは、東京で働くようになり、帰省してお土産はどうしようかと考えたとき。岡山のお土産と言えば「きびだんご」「大手まんぢゅう」「むらすゞめ」などが定番ですが、駅のキヨスクでふと目についたのが素朴な雰囲気の「高瀬舟羊羹(ようかん)」でした。

 亡くなった母がたまに食べていたんです。羊羹をしばらく放っておくと糖分が固まり表面がカリカリになる。これがまたおいしいんだと言って。当時のぼくにはピンとこなかったんですが、今はわかる気がします。

 高瀬舟は軽い感じのシンプルな羊羹ですが、小豆の味と香りがしっかりと舌に残る。僕はお茶党で、最近は自分で淹(い)れた台湾紅茶や中国茶と一緒にいただいています。上がカリカリになったこの羊羹、香りの強いお茶と合うんです。仕事の合間や終わりに飲む日本酒のお供にすることも。「ああ、最近食べてないなぁ」と、思い立って取り寄せるたび、母を思い出す羊羹です。

 

◆本店 岡山県真庭市落合垂水199(TEL0867・52・0005)。
 7個入り330円。
 午前8時半~午後5時。
 (日)休み。
 全国発送可。


 かねはら・みずひと 翻訳家・法政大社会学部教授。
 近訳書に「文学効能事典」(フィルムアート社)、「英国諜報(ちょうほう)員アシェンデン」(新潮文庫)、「ガラスの封筒と海と」(求龍堂)など。

(2017年8月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)