母が新潟の生まれで、実家近くに店がありました。今も古風な作り方で、味が変わりませんね。ヨモギを練り込んだ生地が、最近の軟らかな笹団子と違って、しゃきしゃきと歯で切れるんです。それが笹の香りと見事に合う。縛っているイグサを引いてちょっと笹をむくと裸になる、この形もいい。
子どもの頃、5月に祖母がちまきと一緒に送ってくれて、亡くなってからは母が注文していました。母には土地との絆だったのかも。よく夏に新潟を訪れて、小遣いをもらって近くの朝市に行くのが楽しみでね。行商のおばさんたちが話す、東北弁の音の混じった濃厚な新潟弁が本当にきれいで、聞きほれました。笹団子は各家々で作られていたもので、市にも色々と出ていました。味が全て違いましたね。
中世以降にできて、そのままの味を持っているお菓子を食べると感動を覚えます。名もない色んな人の味覚や感覚が合わさって、時間をかけて「最適」に向かったもの。これが真理だと思います。こういうのって世界各地にあって、地味でいて絶品なんです。
◆新潟市中央区寄居町332(TEL025・222・0429、FAX225・5175)。
1個180円。
午前9時~午後6時半。
(日)(祝)休み。
電話、ファクスで注文可(送料別)。
なかざわ・しんいち 人類学者。
ディレクターを務める「野生展 飼いならされない感覚と思考」が東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで10月20日から開催。