砂糖の「甘い」っていう感覚が好きなんです。ぼくは敗戦時に5歳で、空襲も体験しました。その時代は砂糖に飢えていた。配給に行列して並んで、もらえる砂糖はほんの少し。あこがれの対象でした。祖母の代から東京・東中野に住んでいて、終戦後の焼け跡の風景をよく覚えています。空き地だらけで、拾ったもので工夫して色んな遊びをした。何もなかったけど、創造力はあった時代です。
このお店は終戦後、東中野に移転してきたんです。ご近所さんでね。ぼくはお煎餅(せんべい)ってあんまり食べなかったけど、このザラ丹には憧れていた。なかなか買ってはもらえなかったけどね。
手土産を持って行くときは、半分くらいの割合で、はやしやさんのかき餅(もち)を持って行きます。今はモノがあふれ返っているから、変わらない味に安心するのかも。最近は甘いものを控えているから、ザラ丹は久しぶりに食べたけど、ザラメの粒ってこんなにも小さかったのかなって驚いた。それだけ子どものころの「砂糖」の印象が強烈だったんだろうね。
◆東京都中野区東中野3の1の1(TEL03・3371・8848)。
小85グラム260円、大142グラム440円。
午前10時~午後8時。
(日)(祝)休み。
もとはし・せいいち 1940年生まれ。写真家・映画監督。
近著に写真集「在り処(か)」(IZU PHOTO MUSEUM)、写真絵本「バオバブのことば」(ふげん社)など。