この「オトコの別腹」をいつも楽しみに読んでいるんですがね。今日は、あたしがずっと紹介したかった塩大福の話を一席うかがいましょうかね。
昭和13年に巣鴨で生まれまして、地蔵通りは昔から遊び場です。小さい頃は食料不足でしょ。甘い物はなかなか食べられなくて、高嶺(たかね)の花。それでも中学に上がる頃には、寄席に通ったり、ここの大福買ったりできるようになりましたね。8代目春風亭柳枝に弟子入りしてからも、わずかな小遣いで塩大福を立ち食いして。ふところ具合がよくなってからは、楽屋に差し入れすると落語家仲間や若いのにも「これはどこのだ。うまいうまい」って喜ばれました。あたしの顔見ると、「塩大福の師匠」なんてねだってきますよ。
まろやかな塩があんこの甘さと混ざっていい塩梅(あんばい)だねえ。主人こだわりの伊豆大島の塩だってさ。昭和10年生まれのここの主人には「私の方が兄貴だ」なんて弟分扱いされましたけど、だいぶ味の分かるオトコになりましたよ。「饅頭(まんじゅう)こわい」じゃないけど、やっぱりあたしゃあ、塩大福がこわいねえ。
◆東京都豊島区巣鴨3の20の17(TEL03・3917・2450)。
130円。
午前9時~午後5時(とげぬき地蔵縁日がある毎月4、14、24日は7時~6時)。
不定休。
店内でも食べられる。
しゅんぷうてい・えいし 落語家。
東京・西巣鴨生まれ。1973年に真打ち昇進、83年に春風亭栄枝を襲名。著書に「蜀山人(しょくさんじん)狂歌ばなし」(三一書房)。