大阪の八尾出身ですが、このお店も八尾が発祥なんです。大正時代からの老舗で前から知ってはいたけど、僕たち世代の子どもの頃は和菓子が縁遠くて食べたことがなかった。それを東京の表参道で見つけて「おお、八尾の桃林堂! なんだこのちっちゃいたい焼きは」って驚いて。このお店と同じ町で育って、工場が多い八尾とは最も違う表参道で初めて食べた。特殊な感慨があります。
ほかのたい焼きを食べる時は、怒られちゃうんですけどパキッと割って中のあんこを全部出すんです。そのくらいが皮とのバランスがいい。もったいないのであんこは好きな人に食べてもらうんですが、ぎゅーっと出すのがテーマを台無しにしているようで、人知れず罪悪感を感じる。でも、これは唯一、罪悪感なく食べられるたい焼きです。大きさが程よくて、甘みもちょうどいいんです。
俳優さんの舞台や、自分についてくれた後輩が監督になって映画を撮っている時に、「やったね、よかったねっ」ていう差し入れにぴったりなんです。自分がもらってうれしいものを贈りたいですよね。
◆青山表参道本店
東京都港区北青山3の6の12(問い合わせは03・3400・8703)。
1個291円、竹かご入り5個1728円など。
午前10時~午後7時((月)は5時まで)。
1月1~3日休み。
オンラインショップでも注文可。
みいけ・たかし 映画監督。
1960年生まれ。八尾の魅力大使。舞台の演出も手掛ける。代表作に「十三人の刺客」「無限の住人」など。窪田正孝主演の最新作「初恋」が来年2月28日から全国公開。