昔から甘いものが好きで。食べるとほっとするんですよね、人間を落ち着かせるというか。「甘味こそが人間の文明である」という一文を、新刊の中でも書いています。
この十勝のあんドーナツは、全てが絶妙。大きさは手のひらに納まるくらい。粒あんも甘すぎず。生地の厚さも、揚げ具合も、ちょうどいいんです。特に気に入っているのは表面にまぶされたグラニュー糖。他のお店でよく使われている粉砂糖だと、生地につきすぎて甘すぎる気がしちゃうんですね。
あんドーナツってパン屋の定番商品じゃないですか。世の中のいろんなお店が出しているけれど、いくつも食べてみた中で自分にはこれだったんです。行きつけのそば屋に行ってから、駅前のアンデルセンに寄っておやつにあんドーナツを一つだけ買って帰る。そんなルーチンもできあがっています。
小説は、ベストセラー1位だからって自分にとって一番面白いという保証はありません。自分に合う本は自分で探すしかない。同じようにおやつも、自分の「おいしい」を信じて見つけるのが大事なことだと思います。
◆広島アンデルセンや伊勢丹新宿本店など、広島県や関東を中心に全国で販売。
216円。
問い合わせはお客様相談室(0120・348817)。
いそざき・けんいちろう 小説家。
1965年生まれ。2009年「終の住処」で芥川賞。戦後を彩った様々な事件とその陰にある無数の生を描き出した「日本蒙昧前史」(文芸春秋)は6月26日発売予定。