縁ありしものは必ずまた巡り合える。差し入れで、学生の頃地元で食べた土佐屋さんの芋ようかんに再会したんです。ここのはふかした芋を裏ごしせずに固めて、芋のつぶつぶを残しているのがたまらないんですよ。一口サイズでなく大判なのも色合いも素朴で。人の手で作ったプロセスが残っている。
ぎゅうぎゅうに固めて直線的に切ったものに異様にひかれるんです。芋ようかんは、俺は微動だにしないぞっていう態度で、それがひとたび口の中に入った瞬間、こちらの思うまま崩れて、自分が主役になれる。芋ようかんサイドに立てば、無常観もあり、分をわきまえているようでもある。それでいて食べるプロセスは甘くておいしいんだから。
他と比べると、芋ようかんは和菓子界の裏道をいっている感がある。学生時代、俺は芋ようかんの価値を分かっている、と思いながらも、やれ洋菓子だ何だ、と騒ぐ友だちには言えずにいた。その芋ようかんづくりを土佐屋さんは80年以上、僕の地元の巣鴨かいわいで続けてきたんですよ。よく風雪に耐えた! 和菓子の津軽平野、とたたえたい。
◆本店 東京都豊島区西巣鴨4の31の8(問い合わせは03・3917・7228)。
1本長さ10センチメートル、280円。
現在は(月)(水)(金)の午前11時~午後4時(完売次第終了)。
本店のほか大丸東京店も。電話、オンラインで注文可(送料別)。
ふるたち・いちろう フリーアナウンサー。
8月14日午後7時、無観客ライブ「古舘伊知郎 トーキングブルース 2020夏」をインターネット「Streaming+」で有料生配信。8月17日までアーカイブ視聴可。