華道の醍醐味(だいごみ)は、花をめでて話がはずみ、人と人とがつながること。お花も、お茶やお菓子のようにもてなしの要素の一つです。前家元の祖父も、いつも楽しそうにワイワイやっていました。
その傍ら、お稽古の後のティータイムやおばの茶道教室などでは、京菓子の老松さんが定番でした。「是什麼」のベースである「御所車」は、歯触りのよい落雁(らくがん)の食感と粒あんの優しい甘さの相性が抜群。大好きでしたね。そこに季節ごとのドライフルーツをあわせたのが、退蔵院で供されるこのお菓子。品のいい甘さに果実の酸味が加わり、愉快な味わいです。ナマズをひょうたんでどう捕まえるか、という禅問答を描いた退蔵院の国宝、如拙(じょせつ)筆の「瓢鮎図(ひょうねんず)」がモチーフ。何が入っているのかなと考えさせ、和菓子で禅問答を楽しく提案しています。
禅をわかりやすく説いてくれる退蔵院の松山大耕君は高校の後輩で、家族ぐるみの付き合い。京都の伝統芸能や工芸作家、寺社、老舗飲食店の担い手には、横のつながりがあります。友達づきあいの中で文化が紡がれていく京都には、コラボレーションが生まれやすい素地があるのでは。寺と和菓子店、和菓子とドライフルーツ。文化はかけ算ですね。
◆京都市右京区花園妙心寺町35(問い合わせは075・463・2855)。
6個1300円。
午前9時~午後5時。
販売は当面土日祝のみ。
在庫が少ないため、事前に電話で要相談。
地方発送も可。
ささおか・りゅうほ 未生流笹岡三代家元。
10月4日(日)午前10時~午後4時、京都市東山区粟田口三条坊町の青蓮院門跡にて、未生流笹岡京都支部展を開催(観覧には要拝観料)。著書に「いけばな 知性で愛でる日本の美」(新潮新書)。