大学生のころ、当時付き合っていた妻にお土産で何か買おうと思っていたら、近所の不二家が目に入ったんです。全体的にピンクでファンシーな店内に、ぼんやりしたおじいさんが1人。その不思議な感じに引き寄せられるように店に入りました。
商品名から妻のほっぺたを連想して、これを買ってあげたら面白いんじゃないかと思って。恥ずかしいことを言うようですけど、僕、妻のほっぺたが好きやったんですよ。あ、でも妻だけじゃなくて、妹のほっぺたも突っついてましたけどね。
見た目はパンっぽくて軟らかそうに見えないのに、食べたらほわほわ。90年代の最新の技術力で、最先端の軟らかさを追究しましたっていう感じがいいんですよね。
あのおじいさんは僕を「ペコちゃんのほっぺ」に目覚めさせるためにこの世に現れた、亡くなった先代の店主だったのかもしれません。
◆1994年発売。
カスタード、チョコクリームのほか、季節限定品も。
100円。
問い合わせはお客様窓口(0120・047228、午前9時~午後6時)。
もりみ・とみひこ 作家。
近著に『聖なる怠け者の冒険』(朝日新聞出版)。7月、『有頂天家族』アニメ化へ。