実家がお寺だったので来客が多く、子どもの頃はよくお茶請けに出すお菓子を食べさせてもらっていました。
地元(現・東近江市)から近いこちらのお店のでっち羊羹もそのひとつだったのですが、改めてその魅力に目覚めたのは大人になってから。近江のものは小麦粉を使っているせいか、一般的な羊羹よりもあっさりとした甘さで、コーヒーとの相性もいいんです。細く短冊形に切ると片手で食べられて、原稿を書きながらつまむのにもぴったり。
店がある八幡山のあたりは、和菓子だけでなく洋菓子も全国区の有名店があるなど、甘いもの好きにはおすすめです。運河沿いには近江商人の歴史を感じる街並みもあり、中国からの来客もよく連れて行きます。中国の人たちもたいていお茶とお菓子は好きですから。おいしいものを食べてから、琵琶湖の景色のいいところに行ったり、山に登ったりするのが定番。大阪や京都に行きなれていて、ちょっと「通」な観光を求めている人にも喜ばれます。
最近は国内のベトナム系コミュニティーの取材などが増えていて、今は「『低度』外国人材」の続編のような書籍を執筆中。原稿のお供には、やはりコーヒーとでっち羊羹です。
◆滋賀県近江八幡市玉木町2の3(電話0748・32・2610)。3本包み972円、5本包み1620円。午前9時~午後6時、[火]休み(祝日の場合は営業)。ホームページで通販可。
やすだ・みねとし ルポライター。著書「八九六四『天安門事件』は再び起きるか」で第50回大宅壮一ノンフィクション賞、第5回城山三郎賞を受賞。近著に「『低度』外国人材」や、「みんなのユニバーサル文章術」など。