東京・神楽坂に住んでいた当時、いつも通る道は決まっていたんです。その日は、仕事で自転車で矢来町の新潮社に行った帰りがけ、ふと、故・志ん朝師匠のお宅は今どうなってるかな? ちょっと行ってみようと思って、住宅街に入っていったらこのお店があったんです。
バニラキングが一番好きですね。トロトロ系のプリン。甘ったるくなくて、カラメルの苦みもあり、バニラが利いていておいしい。お皿には出さず、カップから。最初は上の方を味わって、最後にカラメルとぐちゃぐちゃにして食べます。怒られそうな食べ方ですけどね。
落語でも、食べ方を変えろと言われるんですよ。例えば大福。小さいのは一口で放り込み、あんこが多ければぱくぱくっと、餅が軟らかいのは、手でにゅ~と伸ばしてみたり……。食べた後に指をなめるしぐさは、会場が広くなった今は伝わりにくいので、音をたててなめろという師匠や、いやたてるなという師匠と、食べ方も人それぞれです。
入門するまで甘い物はちょっと苦手だったんですが、女将さんにつきあううちに食べられるように。口がおごっちゃわないよう気をつけないとね。
◆東京都新宿区矢来町103(問い合わせは03・3269・8933)。
各1個421円。
午前11時~午後7時(土日祝は6時まで)。
原則火、第1、3水休み。
写真 はノーブル、バニラキング、ジパング=写真左から=
とうげつあん・はくしゅ 落語家。1968年生まれ。
六代五街道雲助に弟子入りし、2005年9月に真打ちに昇進。6月25日、東京都北区の北とぴあ「白酒独演会」ほか、各地で公演予定。