かんだ瞬間に、口の中にジュワッと油が広がります。あの味がたまらなく好きで。油とあんことちょっとした塩気。長年愛されるのが分かるなあ。
寄席の興行期間の中日(なかび)に、トリを務める師匠から食べ物を差し入れるのが慣例なんです。お菓子とかカツサンドとかを。これを「載せ物」と呼びます。師匠伸治の載せ物は必ず、御門屋の揚まんじゅう。買ってきてくれと頼まれて、楽屋入り前に恵比寿の店舗に立ち寄って、大量に買ってましたね。
寄席演芸の世界では、住み込みや通いでの修業が当たり前なので、本来は色々お使いなどを頼まれます。ただ、うちの師匠は「寄席で修業を積んで、よそで可愛がってもらえ。俺の所にはそんなに来なくていいよ」と。だからお使いを頼まれると師匠の役に立つと感じられて、うれしかったんです。揚まんじゅうは師匠と僕をつないでくれたものですね。
古典落語の「まんじゅうこわい」をやるときに、御門屋の揚まんじゅうで師匠から食べ方を教わりました。落語ではそのままは食べない。まずは両手に持って、人に見せるみたいに二つに割る。片方を親指と人さし指でつまんだら大口でかぶりつく。最後は指までぺろっとなめるしぐさで演じるんです。
◆東京都目黒区の本店、エキュート東京やアトレ川崎など首都圏14店舗、静岡1店舗で販売。1個130円、5個入り648円。☎0120・811・501。オンラインショップでも購入可。
かつら・みやじ 落語家。1月から日本テレビ系の長寿演芸番組「笑点」レギュラー。TBSラジオ「これが宮治でございます」(日午前5時半)、文化放送「桂宮治のザブトン5」(月~金の午後5時半ごろ)などに出演。